診療支援
治療

“Gedankengang”ということ
木下 光雄
(大阪医科薬科大学 名誉教授/西宮協立脳神経外科病院 名誉院長〔兵庫県西宮市〕)

 恩師から“Gedankengang”ということを意識しておくことの大切さを教わった.言葉の意味合いとしては「一連の考え,思考の仕方」ということになるかと思う.これは論理的で合理的なものでなければならない.問題に直面したとき,いつも「どのように考えていけばよいか」ということを念頭において対応してきたが,実臨床においても大きく誤ることはなかったように感じている.

 診療は医療面接から始まり,診察,検査を経て診断に至る.暫定的な場合もあるが傷病名が確定すれば治療法は決まる.患者への説明と同意を得て治療法を選択し,これを実施して経過観察する.手術治療を選択するにあたっては,その根拠が論理的かつ合理的なものであるかを検証し,患者背景や術者のテクニカルスキルを含め適応するかを判断する.治療の経過が予期されたものと異なる場合には,診療過程を遡って検証していく.いわゆる診療のスパイラルといわれるものであり,このことにより臨床のスキルは確実に向上する.大切なことは,すべての過程において“Gedankengang”ということを常に意識しておくということである.安全・安心の医療を実践する上でも意義がある.

 医師の働き方改革が推し進められようとしている現況下,臨床の現場では積極的に医師から多職種へ業務移管(タスク・シフティング)されるようになってきている.タスクシェアする際には多職種で構成されるチームをまとめ上げる工夫や配慮が求められ,適切に対応するノンテクニカルスキルが必要となる.まさに“Gedankengang”が役立つ場面といえる.

 医師の生涯教育は自主的に行うべきものであり,自己研鑽によりスキルは向上する.限られた時間のなかで,より一層効率よく自己研鑽できるよう研修会やワークショップが数多く開催され,またさまざまなツールが開発され提示されている.どれを選択するかということも大切ではあるが,

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