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対面診療における問診と診察の重要性:骨軟部腫瘍の外来より
岩本 幸英
(九州大学 名誉教授/労働者健康安全機構九州労災病院 院長〔北九州市小倉南区〕)

 最近オンラインによる外来診療が推奨されているが,少なくとも初診においては,対面診療なしに的確な診断を行うことは難しい.ぜひ若い整形外科医の皆さんは,画像診断やオンライン診療に頼る前に,まず適切な問診と診察を行えるだけの知識と経験を身につけてほしい.本稿では,骨軟部腫瘍外来における実例を示す.

①問診

痛みを伴う肘の軟部腫瘤で紹介された患者「1週間でみるみる大きくなりました」

私「猫を飼ってませんか?」

患者(けげんな顔で)「飼ってますけど……」

私「子猫じゃありませんか?」

患者「その通りです!何でわかるんですか?」

私「猫ひっかき病の可能性があります.針生検で確認しましょう」

 外来における針生検の結果は炎症細胞浸潤や壊死を伴うリンパ節炎,猫ひっかき病の診断で抗菌薬投与,腫瘤は消失した.

(解説)1週間という短期間での増大は,悪性腫瘍より炎症の可能性が高い.肘や腋窩は飼い猫がじゃれてできる手や前腕の傷から混入した病原体によるリンパ節炎の好発部位である.よくじゃれる子猫であればより可能性が高い.

 この例のように,問診においては,患者さんから診断のためのヒントを聞き出すことが大切である.

②診察

 軟部腫瘍のうち悪性腫瘍の大まかな目安は,大きい(>5cm,鶏卵大以上),深在性(浅在性筋膜より深部),弾性硬である.ところが研修医のカルテを見ると,良悪性の如何にかかわらず,ほとんど弾性硬と記載してあり参考にならない.軟部腫瘍の硬さの目安は,が皮下脂肪程度の柔らかさ,弾性軟が力を抜いた腓腹筋の硬さ,弾性硬がつま先立ちした腓腹筋の硬さ,が骨や軟骨の硬さであることを知ったうえで記載してほしい.また,悪性が疑われたら必ず所属リンパ節を触知し,腫脹の有無を確認してほしい.リンパ節転移をきたす軟部腫瘍は滑膜肉腫,横紋筋肉腫,類上皮肉腫,明細胞肉腫など少数に限られるので診断を絞り込みやすいし,病期診断や治療方

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