診療支援
治療

整形外科医のよろこび
濵西 千秋
(近畿大学 名誉教授/市立岸和田市民病院リハビリテーションセンター センター長〔大阪府岸和田市〕)

 私の目に焼き付いている組織写真がある.椎体・海綿骨類似生体材料として作製したチタンメッシュボールをウサギに埋め込み,ヴィラヌエバ染色を施した研磨切片の世界である.真黒なチタンワイヤに沿うピンク色の類骨と緑色の骨梁.これらが破骨細胞を交えて多寡・濃淡入り乱れる万華鏡の世界であった.延長仮骨に見られる旺盛な類骨反応や軟骨を経ない直接骨化像にも興奮した.CTやMRIに慣れた諸君の目には,単純X線でうっすらと見える頼りない骨折仮骨に旺盛な内軟骨骨化組織像を重ねることは困難かもしれない.しかし諸君が運動器専門医になりたいなら,そういう驚異の世界をイメージでき,かつ治癒反応に感動できる医師になれる教育を受けてほしいものである.

 急性期病院に勤務していると,入院はとにかく手術をするため,手術はとにかく早く退院・転院させるため,という流れに慣らされてしまう.諸君が期待する教育も手術手技であろう.「保存療法の原理」を教育され,かつ実践するチャンスがあるだろうか.手術がすべて,ではなく,目の前の痛みを手術しないでも「癒せる」方法は本当にないのか常に自問し,先輩から聞き出してほしい.

 かつて,がちがちにプレート固定した骨折は抜釘したら再骨折した.その誤りを反省した結果,ロッキングプレートが開発された.骨はストレスがなければ治癒反応が起こらない.強固な内固定は骨の治癒を邪魔していたのである.この治癒原理は今も真実である.

 脊椎も同様である.たわんで機能する器官である.Pedicle screw(PS)を用いてその一部でもリジッドに固定すれば,入院短縮の大目的は達成できても隣接椎体の破綻は時間の問題である.固定延長を繰り返し結局は第8胸椎まで固定するのを当たり前と思わないでほしい.PSをロッドではなくゴムでつなぎ,あえてセミリジッド固定にしたシステムもかつては使用されていたのである.考え方としては

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