診療支援
治療

運動器の解剖と機能
中村 耕三
(東京大学 名誉教授/東和病院 院長〔東京都足立区〕)

 大学での初期研修を終え,昭和49年(1974年)の最初の外勤先は埼玉県の小川赤十字病院であった.部長の東璋先生と新人の私の2人体制だった.部長は手の外科と関節リウマチを専門とされており,多くの外科治療を経験させていただいた.大腿骨骨折は青年のオートバイ事故による骨幹部骨折に対する髄内釘(Kuntscher法)が多かった.関節リウマチも多く,外科治療は人工膝関節(Geomedic型),人工股関節(Charnley型)であった.手術中の指南だけでなく,解剖と手術書を勉強するようにと指導を受けた.解剖については,『Grant's Method of Anatomy』を薦められた.Grantは『Grant's Atlas of Anatomy』がよく知られているが,Method of Anatomyは図が適切に簡略化,模式化されており,アトラスとハンドブックとしての目的のほか,dissecting manualsとして書かれている.系統解剖のlocomotor system,局所解剖のupper limb,lower limb,neckのところは日本語に訳しノートを作成したが,私は昭和43年頃の東大紛争ストライキの影響で解剖学の実習,授業の期間が短縮された世代なので,解剖のよい見直しになった.

 整形外科の臨床経験を積むにつれ,運動器の機能の理解が重要であることを認識するようになった.これには,井原秀俊先生らの訳による『図解 関節・運動器の機能解剖』〔Anatomie fonctionnelle de l'appareil locomoteur (J. Castaing, et al)〕が役に立った.関節,脊椎の運動を理解しやすいように,多くの図で説明されている.また,塩田悦仁先生の訳による『カパンディ関節の生理学(現在は『カパンジー機能解剖学』に改題)』〔Physiologie

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