診療支援
治療

「手術は成功しました!!」
藤 哲
(弘前大学 名誉教授)

 時々「本日,日本で初めての○○手術成功!!」などというスペクタクルなニュースが登場する.いつも思うのだが,「手術の成功」というのはちょっとおかしいと感じる.手術が終わってすぐ,前から用意されていたパネルを頭上に記念写真をマスコミに売りこむなど,まるで大昔の見世物小屋の宣伝のようでおぞましいものだと私は思う.

 機能回復が治療の目標となることが多い整形外科医にとっては,「手術が成功した」といえるのは十分な経過観察が終わったあとである.手術直後にいえるのは「手術は予定通り無事終了した」だけである.

 「最も好きな手術は?」と聞かれたら,私は「先天性下腿偽関節症に対する血管柄付き腓骨移植(vascularized fibula graft;VFG)」と答える.先天性下腿偽関節症に対するVFGとIlizarov創外固定の併用は,装具装着期間の短縮が得られ,小児のQOL向上に貢献した.自験例11例中,18歳以上の9例と15歳の1例の計10例が装具なしで歩行している.その10例中8例では術後平均17か月で装具なしの歩行が可能だった.

 若い頃の話であるが,私自身が1984年に最初の手術をしてから5年後の1989年に,それまでに治療した7例をSingaporeの国際学会に「全例骨癒合が得られた!!!」と発表した.しかし,情けないことにVFGを早くからやっていたPho教授は,食事には誘ってくれたが私の発表を褒めてはくれなかった.のちに思い知らされたことなのだが,経過観察期間が短すぎたのだ.なかには,移植骨の骨折によりさらなる手術が必要になった例もあった.

 特に小児では,少なくても10年以上の経過観察,できれば成長が止まるまでの経過観察が必要である.

 マスコミが手術したその日にあるいは翌日に報道することがあるが,「初の○○手術成功!!」というスペクタクルは,われわれ整形外科医から見ると恥ずかしい

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