臨床医にとって,「患者をよく診る」ことの重要性が,今日ほど強く問われている時代はないであろう。理学的な所見だけでなく,形態学的,生理・生化学的,免疫学的な検査所見や,イメージ(画像)の所見を正しく総合的に判断して,ある結論に導くのが診断法であるが,補助診断法がいちじるしく進歩している現在では,単に病名の決定のみならず,病態や予後,さらに治療法の選択や予防にまで触れる必要がある。それだけに,従来にも増して,総合判定が難しくなってきている。
診断法に関する書物はこれまでも数多くあり,それぞれに優れた特徴をもっている。しかし,最新の検査法を含めて,普遍的・総合的な診療技術を教えるテキストは見当たらない。本書は,高学年の医学生,研修医のみならず,一般臨床医を対象として上記の要請に沿うものとして企画されたものである。
本書の内容は,症候編と疾患編から構成されている。
症候編では,主な症候の鑑別上の