緊急処置(図1図)
主として運動関連性の熱中症(exertional heat stroke:EHS)を対象として述べる。
【1】諸症状の有無,および重症度を確認する。
❶重症度Ⅰ度:手足のしびれ,めまい,立ちくらみ,筋肉のこむら返り
❷重症度Ⅱ度:頭痛,嘔気・嘔吐,強い倦怠感
❸重症度Ⅲ度:意識変調,けいれん,高度の体熱感
【2】中心体温が40℃以上であれば,必ず入院させる。
【3】可能であればice water immersion(氷水浸漬)を行い,水温は15℃以下に保つ。通常は15~20分で3~4℃の体温下降が期待できる。
【4】ice water immersionできない場合,水道水をホースでかける,あるいは冷却タオルで全身を覆う。利用できる氷やタオルに制限がある場合は,頸部・腋窩部・鼠径部など,大血管が通る箇所を中心に冷やす。
【5】体温が39℃以下に下降すれば,救急冷却を緩めてよい。
【6】中心体温は直腸温のみが推奨される。それ以外の部位の計測は,中心体温を正しく反映しない場合がある。そのような場合の冷却は,「患者が戦慄を訴えるまで」を目安とする。
診断のチェックポイント
●定義
❶体温上昇と発熱:健康成人の体温は,高くても6時の時点で37.2℃,16~18時の時点で37.7℃であり,これを超えた場合は体温上昇ではなく発熱(fever)と考える。
❷体温の日内変動:正常の日内変動は通常0.5℃であるが,発熱性疾患の回復期には1℃程度の開きを認めることもある。
❸高熱を定義する設定体温
■高熱:明確ではないが,40℃以上の場合,severe hyperthermiaともよばれる。
■超高熱:41.5℃(106.7˚F)を超える熱は超高熱(hyperpyrexia)とよばれる。感染症でもこのレンジの発熱を呈することがあるが,視床下部を冒す中枢性病変(脳出血など)も原因となる。
❹体温上昇(広義の発