診療支援
診断

疲労感・全身倦怠感
Fatigue
沢田 哲治
(東京医科大学教授・リウマチ・膠原病内科)

 疲労感・全身倦怠感は非特異的な自覚症状である。原因疾患は多岐にわたり,日常診療において最も遭遇する機会の多い症候の1つである。高齢者のフレイルは加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下した状態であるが,疲労感・全身倦怠感はフレイルを規定する重要な症候の1つである。

緊急処置

 疲労感・全身倦怠感自体で緊急処置を要することはまれであるが,原因疾患によっては緊急処置を要する。特に急性発症では感染症,循環器疾患,脱水,電解質異常,出血,臓器障害(肝障害や腎障害)を除外する。高齢者では原因疾患による症状が不明確なことがあり注意を要する。

診断のチェックポイント

❶休息で回復するか:健常人でも過度の労働に伴い疲労感や全身倦怠感を感じるが,これは適切な休息により回復する(生理的疲労)。一方,休息しても回復しせず軽微な労働にもかかわらず不釣り合いに強い疲労感や全身倦怠感は病的疲労と考えられる。

❷原因は何か:心因性のほかに各種慢性疾患や消耗性疾患などに起因して認められる。原因疾患による所見を見いだして原因検索を行う。

定義

❶疲労とは:疲労は「過度の肉体的および精神的活動,または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」と定義される(日本疲労学会「抗疲労臨床評価ガイドライン」)。

❷疲労と疲労感:疲労は「疲労」と「疲労感」とに区別して用いられることがある。「疲労」は心身への過負荷により生じた活動能力の低下であり,「疲労感」は疲労が存在することの自覚症状であり,不快感と活動意欲の低下を認めることが多い。全身倦怠感,だるさ,脱力感は「疲労感」とほぼ同義に用いられるが,神経学的所見である筋力低下とは区別する。

【1】病歴と身体所見:詳細な病歴聴取と身体診察により疲労感・全身倦怠感以外の症候を見いだして,鑑別診断を考える。

❶病歴聴取:誘因(先行感染症状やストレス)

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