診療支援
診断

成人のけいれん
Convulsion in Adult
辻 貞俊
(国際医療福祉大学名誉教授)

緊急処置

 全般性けいれん性てんかん重積状態(てんかん重積状態)は,生命の危険があり緊急処置を要する。初期治療(早期てんかん重積状態)はジアゼパムないしロラゼパムの静注であるが,治療可能な施設に緊急搬送する。静注による呼吸抑制に注意する。

 けいれん性てんかん重積状態は,「けいれん発作がある程度の長さ以上に続くか,または,短い発作でも反復し,その間の意識の回復がないもの」(ILAE国際抗てんかん連盟,1981)と定義されている。これまでけいれん持続時間については30分とすることが多かったが,持続時間については,「けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで,30分以上持続すると後遺障害の危険がある」(ILAE,2015)としている。

 治療開始後30分以上経過してもけいれん発作が持続する場合は確定したてんかん重積状態として,気道確保と酸素投与し,ホスフェニトイン,フェノバルビタール,ミダゾラムないしレベチラセタム(本邦保険適用外)の静注を行う。60~120分以上持続する場合は難治てんかん重積状態として,気管挿管・人工呼吸をし,ミダゾラム,プロポフォール,チオペンタールないしチアミラールの静注を行う。有効であれば持続静注し,全身麻酔療法を行う。

 けいれん性てんかん重積状態以外のけいれんでは緊急処置の対象となることは少ない。

診断のチェックポイント

定義

❶定義:けいれんとは,全身または身体の一部の筋群の発作性の不随意収縮である。したがってけいれんには,けいれん性てんかん発作,種々の原因による急性症候性けいれん発作,振戦・バリズム・舞踏運動・ミオクローヌスなどの不随意運動,スパスム(れん縮),クランプ(有痛性筋けいれん),破傷風(テタヌス),顔面けいれん,チック,線維束性収縮などが含まれる。てんかん発作の意味でけいれんという言葉が使われることがあるが,けいれんはてんかん発作の代表的

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