診療支援
診断

成人の脱水
Hypovolemia/Dehydration in Adults
柴垣 有吾
(聖マリアンナ医科大学教授・腎臓・高血圧内科)

 日本語における“脱水”は,英語ではhypovolemiaかdehydrationを示すが,これらは全く違う病態である。前者が細胞外液量(血漿量)の低下を主に示し,循環不全となる病態であるのに対し,後者は細胞内液量の低下を指し,高ナトリウム血症(高浸透圧血症)による意識障害をきたす病態で必ずしも細胞外液量の高度低下を示さない。

緊急処置

【1】Hypovolemia

❶緊急病態は循環不全・ショックである。まず,ショックに対するABC(airway,breathing,circulation)の評価と対応が重要である。

❷意識障害がある場合は気道確保のうえ,酸素吸入・換気の維持が必要となるし,意識障害がないあるいは軽度であっても,酸素化はショック状態においては,末梢酸素供給の観点から必須である。

❸循環においては,循環血漿量の状態であるため,静脈確保のうえ,等張の晶質液(乳酸リンゲル液,生理食塩液)の急速投与を行う。アルブミン液などの膠質液の晶質液に対する優位性は明らかでなく,アルブミン液などの使用は第1選択とはならない。

❹十分な輸液にても血圧上昇が不十分な場合には昇圧薬(ノルアドレナリン)や心機能によっては強心薬が検討される。

❺循環血漿量低下におけるショックにおいては,下肢挙上(Trendelenburg体位)が行われることがあるが,その臨床的有用性ははっきりしていない。

【2】Dehydration

❶高ナトリウム血症による細胞外液の浸透圧上昇により,細胞内から細胞外への体液移動が生じるために,意外に循環動態は安定している場合も多い。

❷高度細胞内液量低下による細胞虚脱による意識障害が生じる。このため,airway,breathingの確認と対応は必須である。

❸静脈確保のうえ,5%ブドウ糖液などの低張液投与が必須となるが,常に細胞外液量の低下が顕在化する可能性があるため,バイタルサインを

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