緊急処置
【1】心性浮腫:浮腫が急激に悪化し,心機能に異常があり急性心不全症状を疑う場合は,迅速に診断し,初期対応として利尿薬投与を検討する。
【2】静脈性浮腫:深部静脈血栓症による下腿浮腫で,全身状態不良あるいは近位部にある浮遊性血栓を認めた場合は,急性肺血栓塞栓症を併発するリスクがあるので入院加療により抗凝固療法(未分画ヘパリン,フォンダパリヌクス,経口抗凝固薬)を行う。抗凝固療法が禁忌の場合,または,抗凝固療法が可能でも残存血栓の再度の塞栓化により致死的となりうる肺血栓塞栓症に対しては,下大静脈フィルター留置を考慮する。
診断のチェックポイント
【1】病歴
❶心性
■高血圧を代表とする生活習慣病や心筋梗塞などの心疾患の既往。
■浮腫や体重増加。
❷静脈性
■術後,長時間安静などおよび癌既往の血栓形成リスクの有無(表1図)。
■局所性の下腿疼痛。
❸血管性:薬剤性あるいは遺伝性
【2】身体所見
圧痕性か非圧痕性かを確認する。指で5~10秒強く圧迫し圧痕が40秒以上残る場合が圧痕性,残らない場合は非圧痕性。圧痕性は,低アルブミン血症がない限り心不全,腎不全,下肢の静脈圧が上昇する病態と毛細血管透過性亢進による浮腫に認められる。非圧痕性の非循環器系が多く,代表的病態は,低アルブミン血症である。
❶心性
■圧痕性末梢浮腫,頸静脈怒張,Kussmaul徴候(吸気に頸静脈怒張増強),肝頸静脈逆流(右季肋部を圧迫して頸静脈怒張),呼吸困難,倦怠感の有無。
■聴診:心雑音,Ⅲ音,coarse crackles。
❷静脈性
■深部静脈血栓症:Homans徴候(足関節背屈で腓腹部疼痛)。
■有痛性白股腫:腸骨大腿型深部静脈血栓症で下肢全体に疼痛腫脹と白色調。
■有痛性青股腫:最重症型深部静脈血栓症で静脈血行が完全遮断された状態で激痛とチアノーゼ,高度腫脹を呈する。
❸血管性
■局所性,圧痕性で腫脹や発赤を伴う場合は,血管炎を考慮