緊急処置
【1】緊急処置を要する浮腫は,肺水腫や心不全など呼吸循環器系にかかわる病態だけである。この場合は溢水に対する緊急処置(利尿薬投与,呼吸循環管理,緊急透析による除水など)を行う。
【2】慢性浮腫の大部分に緊急性はない。多くの場合,詳細な病歴・身体診察から原因は推測可能であり,原疾患の治療を行うのが原則である。
診断のチェックポイント
浮腫は細胞外液のうち間質液が増加して,全身あるいは局所が腫れた状態である。以下のような点に注意して原因の鑑別診断を行う。
❶全身性か? 局所性か?
❷体重増加はあるか?
❸原疾患,併存疾患は何か?
【1】病歴
❶急性浮腫
■急性発症か? 慢性の経過か?
■浮腫は通常,慢性の経過で起こることが多いが,数日単位で起こることもある。
❷慢性浮腫:後述する原因疾患や併存疾患を想定した病歴聴取が重要で,具体的な薬剤歴や症状の有無を1つずつ確認する必要がある。
【2】身体所見
❶全身性浮腫
■体液量の増加=体重増加を伴う。
■診察で明らかな浮腫を認めたときには,通常3~4kg程度体重は増えている。
■浮腫以外にも体液貯留の所見を伴う。例えば頸静脈怒張,肺水腫,胸水,腹水,過剰心音の有無を確認する。
❷浮腫の分布:左右対称あるいは全身性か,一肢のみにとどまる局所性かは鑑別診断に重要である。
❸圧痕浮腫と非圧痕浮腫
■圧痕浮腫:前脛骨部を10秒間圧迫して皮膚の陥凹を観察する。明らかに陥凹が残る場合を圧痕浮腫という。原則として毛細血管内圧上昇を伴う浮腫である。
■圧痕回復時間(pit recovery time:PRT):陥凹に斜めからライトを当てて影が消失するまでの時間をいう。3か月以内に起こった低アルブミン血症に伴う急性の浮腫では圧痕回復時間は40秒以下である。これに対して心不全や静脈うっ滞など静脈圧上昇による浮腫では通常40秒以上となる。
❹浮腫以外に随伴する所見:感染症や炎症性疾患が原因
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