診断のチェックポイント
診断フローチャートを図1図に示す。
●定義
❶出血傾向は,自然,またはわずかな外力によって生じた血管の損傷による出血が持続する病態である。
❷止血にかかわる血小板,凝固因子,線溶,また血管壁の異常により生じる。
【1】病歴
❶いつから症状が生じたのか,外傷や誘発因子の有無,発症時期からの先天性・後天性の鑑別。先天性の場合は小児期から症状を認めることが多い。
❷抜歯など観血的処置時,分娩,外傷時の出血傾向。月経過多や鉄欠乏性貧血の有無。軽度の出血傾向の場合,自身が出血傾向に気づいていないこともある。
❸特徴的な家族歴〔→血友病(伴性潜性),von Willebrand病(主に顕性)〕。
❹出血傾向をきたす薬剤歴(→抗血小板薬・抗凝固薬),新たに始めた薬剤(→薬剤性血小板減少症,抗菌薬によるビタミンK不足)
❺先行感染,貧血や発熱などの随伴症状〔→IgA血管炎,造血器悪性腫瘍,播種性血管内凝固症候群(DIC)〕。
【2】身体所見
❶貧血や黄疸,発熱など,他疾患の鑑別に重要な身体所見の評価を忘れない。
❷出血の部位・特徴により,血小板・凝固因子異常を大まかに区別する(表1図)。
❸血小板異常は皮膚粘膜出血が特徴(点状出血,月経過多,歯肉出血,鼻出血)。
❹点状出血は静脈圧が高くなる部位,比較的鮮やかな紫となる(下腿を中心)。
❺点状出血に口腔内出血を伴うとき(wet purpura),重篤な血小板減少症を示唆する。
❻IgA血管炎による紫斑は若干盛り上がる。随伴症状としての腹痛,関節痛に留意。
❼凝固異常では皮下に広がる出血斑(斑状出血)。
❽血友病(重度の凝固異常)では関節出血や筋肉内出血が特徴。
❾後天性血友病では関節出血が少なく,皮下に大きな出血斑を認めることが多い。
【3】検査
❶スクリーニング検査として血小板数,PTとAPTT,フィブリノゲン,FDP(またはDダイマー)を測定する。
❷出血