診療支援
診断

黒色皮膚腫瘍
Darkly Pigmented Skin Tumor
田中 勝
(東京女子医科大学東医療センター皮膚科・教授)

診断のチェックポイント

定義:肉眼的に黒色ないし濃褐色を呈する良性および悪性の皮膚腫瘍。黒色となる理由は主にメラニンまたはヘモジデリンの沈着である。鉛筆に由来する炭素(黒鉛)などの異物皮内沈着のこともある。

【1】病歴

❶小児期の発症か(→先天性色素細胞母斑)。

❷思春期以降,成人発症か(→悪性黒色腫)。

❸中高年の発症か(→基底細胞癌,脂漏性角化症)。

❹数日から数週の発症か(→血腫,aneurysmal fibrous histiocytoma)。

❺数か月から数年の発症か(→基底細胞癌,色素性Bowen病)。

【2】身体所見:鑑別診断のために,部位,大きさ,硬さ,色調,隆起の有無,角化の有無,疼痛の有無,所属リンパ節腫脹の有無などの情報がきわめて重要。

【3】検査

❶小さいものほど肉眼での診断は困難であり,ダーモスコピーを行うことが強く推奨される。

❷悪性が疑われる場合:MRI(メラニンはT1WI高信号,T2WI低信号であるが,血液はT1WI低信号,T2WI高信号)や超音波検査(悪性腫瘍ではドプラ血流エコーで豊富な血流信号)を併せて行う。

❸角層のヘマテストが有効なことがある(→爪下血腫,ブラックヒール)。

原因疾患と頻度

【1】色素細胞母斑:良性,きわめて多い。

【2】悪性黒色腫:悪性,少ない。

【3】血管腫,血腫:良性,多い。

【4】脂漏性角化症:良性,きわめて多い。

【5】基底細胞癌:悪性,やや多い。

【6】色素性Bowen病:悪性,ときどき。

【7】色素性汗孔腫:良性,ややまれ。

重要疾患の鑑別のポイント

【1】顔面の濃淡ある色素斑

悪性黒子(図12):平坦なのに黒い。境界不明瞭。ダーモスコピーで非定型偽ネットワーク(非対称色素性毛孔,菱形構造,環状顆粒状構造,灰色偽ネットワーク)。

日光黒子脂漏性角化症の混在(図34):隆起性で角化性。ダーモスコピーで指紋様構造,溝と隆起,脳回転状外観

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