診断のチェックポイント
●定義:肉眼的に黒色ないし濃褐色を呈する良性および悪性の皮膚腫瘍。黒色となる理由は主にメラニンまたはヘモジデリンの沈着である。鉛筆に由来する炭素(黒鉛)などの異物皮内沈着のこともある。
【1】病歴
❶小児期の発症か(→先天性色素細胞母斑)。
❷思春期以降,成人発症か(→悪性黒色腫)。
❸中高年の発症か(→基底細胞癌,脂漏性角化症)。
❹数日から数週の発症か(→血腫,aneurysmal fibrous histiocytoma)。
❺数か月から数年の発症か(→基底細胞癌,色素性Bowen病)。
【2】身体所見:鑑別診断のために,部位,大きさ,硬さ,色調,隆起の有無,角化の有無,疼痛の有無,所属リンパ節腫脹の有無などの情報がきわめて重要。
【3】検査
❶小さいものほど肉眼での診断は困難であり,ダーモスコピーを行うことが強く推奨される。
❷悪性が疑われる場合:MRI(メラニンはT1WI高信号,T2WI低信号であるが,血液はT1WI低信号,T2WI高信号)や超音波検査(悪性腫瘍ではドプラ血流エコーで豊富な血流信号)を併せて行う。
❸角層のヘマテストが有効なことがある(→爪下血腫,ブラックヒール)。
原因疾患と頻度
【1】色素細胞母斑:良性,きわめて多い。
【2】悪性黒色腫:悪性,少ない。
【3】血管腫,血腫:良性,多い。
【4】脂漏性角化症:良性,きわめて多い。
【5】基底細胞癌:悪性,やや多い。
【6】色素性Bowen病:悪性,ときどき。
【7】色素性汗孔腫:良性,ややまれ。
重要疾患の鑑別のポイント
【1】顔面の濃淡ある色素斑
❶悪性黒子(図1図,2図):平坦なのに黒い。境界不明瞭。ダーモスコピーで非定型偽ネットワーク(非対称色素性毛孔,菱形構造,環状顆粒状構造,灰色偽ネットワーク)。