診断のチェックポイント
❶やせは非特異的な所見である。
❷重症度が高く罹病期間が長い疾患はやせの原因となるが,これらは体重減少とは関係なく,すでに診断されていることが多い。
❸体重減少が主たる徴候で,診断しにくい原因は悪性腫瘍,うつ病などの精神疾患,薬物の副作用で,悪性腫瘍の鑑別が最も重要である。
●定義
❶体重減少(body weight loss)は水分,脂肪,骨格筋など体構成成分が減少することである。
❷60歳台以降は生理的に0.1~0.2kg/年減少する。急性の体重減少は主として水分で,エネルギーの摂取と消費のバランスが負の状態では脂肪や骨格筋がエネルギー源として利用されてやせる。
❸厚生労働省のやせ(emaciation)の基準はBMI<18.5で,一般に標準体重の-20%以上のやせを異常と判断する。標準体重の-20%未満でも,意図なしに6か月で5%以上の体重減少をきたした場合は病的である。
❹一般に低栄養状態を伴い,侵襲に対する予備能力がない。
❺意図しない体重減少は成人の外来患者の8%に,65歳以上の虚弱者の27%にみられる。
【1】病歴:体重減少の原因(表1図)を推測しながら問診する。
❶病的なやせの診断をする:どのくらいの期間でどの程度体重減少したかが重要である。思春期なら成長曲線を,発症前の体重が不明なら衣服のサイズの変化を参考にする。
❷意図的な体重減少ではないことを確認する。
■意図的にやせようとしたか,活動性に変化がなかったかを尋ねる。
■体型や体重が関係するスポーツ歴や職業歴,意図しない場合でも食生活や労作量の変化で自然に体重が減少していることがある。
❸食欲と実際の食事量
■食事の画像撮影や記録を提出してもらい,食欲や摂取エネルギーの増減を判定する。
■食事回数と内容,偏食の有無,特殊な食事療法,飲水量も明らかになる。
❹排便・排尿
■消化吸収障害や摂取エネルギーの喪失に関与する排