緊急処置
重症貧血での緊急処置は赤血球(赤血球濃厚液)輸血であるが,急性貧血と慢性貧血で,その基準と対応は異なる。エビデンスに基づいた「血液製剤の使用指針」改定版が2018(平成30)年9月厚生労働省から通知されている。同指針に沿った対応を以下に記す。
【1】急性出血時:ヘモグロビン(Hb) 6g/dL以下で赤血球輸血はほぼ必須である。
【2】血液疾患に伴う貧血
❶Hb 7g/dL以上:原則として輸血の適応はないが,循環動態から慎重に判断する。
❷Hb 7g/dL未満:鉄剤,ビタミンB12,葉酸,エリスロポエチンなどの投与によって改善されるかどうかをみる。改善されないようであれば,輸血を考慮する。
【3】慢性出血性貧血:全身状態が良好な場合は,Hb 6g/dL以下になった時点で赤血球輸血を考慮する。
【4】周術期輸血:循環血液量に対する出血量の割合が20%未満の場合は,原則として輸血の適応はない。
【5】通常はHbが7~8g/dL程度をトリガー値とし,このレベルであれば十分な酸素の供給が可能である。冠動脈疾患などの心疾患あるいは肺機能障害や脳循環障害のある患者では,Hb値を10g/dL程度に維持することが推奨される。
診断のチェックポイント
小児期の貧血は年齢によってその原因が異なるので,好発時期の考慮が重要である。
❶新生児期:血液型不適合による溶血性貧血,先天性溶血性貧血。
❷乳幼児期:鉄欠乏性貧血,巨赤芽球性貧血,感染性貧血,赤血球産生障害の一部。
❸学童から思春期:鉄欠乏性貧血,赤血球産生障害の一部。
●定義:貧血は循環赤血球またはHb量の低下した状態である。貧血の定義は年齢,性別,人種によって異なるが,目安としては,Hb値として新生児は13g/dL,乳幼児は11g/dL,学童12g/dL以下である。
【1】病歴
❶新生児期の重症黄疸の既往ならびに家族歴の有無は,先天性溶血性貧血,遺伝性骨髄不
関連リンク
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