診療支援
診断

マグネシウム異常症
Hypermagnesemia, Hypomagnesemia
花房 規男
(東京女子医科大学准教授・血液浄化療法科)

診断のチェックポイント

定義:マグネシウム(Mg)は細胞内でカリウム(K)に次いで多い陽イオンであり,生体内ではカルシウム(Ca)の作用に拮抗するため,天然のCa拮抗薬ともいわれる。Mgは経口摂取され,腸管から吸収,腎臓から排泄されるが,そのバランスによって過剰・欠乏が生じうる。血清Mg濃度の正常値は1.8~2.4mg/dLであるが,通常,Mgはルーチンで測定される項目ではないため,検査で基準範囲を逸脱している場合,Mg異常症の存在を疑う必要がある。

【1】病歴

❶高Mg血症:通常医原性である。静注あるいは,下剤・制酸薬として投与されたMg製剤によるものである。腎不全の有無・程度の評価と,Mg使用歴を確認する。

❷低Mg血症:慢性の下痢,プロトンポンプ阻害薬の内服,アルコール多飲,利尿薬の使用が低Mg血症の原因となるため,これらの有無を確認する。

【2】身体所見

❶高Mg血症:4~6mEq/L(4.8~7.2mg/dL);嘔気,ほてり感,頭痛,倦怠感,傾眠,深部腱反射の低下・消失。6~10mEq/L(7.2~12mg/dL);傾眠,低Ca血症,深部腱反射消失,血圧低下,徐脈。10mEq/L(12mg/dL)以上;骨格筋麻痺(弛緩性麻痺,呼吸不全),完全房室ブロック,心停止。

❷低Mg血症:中枢・末梢神経の過興奮症状(振戦,テタニー,けいれん),心血管系症状(QRS幅の増大,T波増高,PR間隔の延長,上室性・心室性不整脈)がみられる。電解質異常として,低Ca血症,低K血症,代謝性アルカローシスによる症状が認められる。

【3】検査

❶Mg異常を疑う場合:血清Mg値を測定する。

❷合併することが多い電解質異常のチェック:血清Ca,血清K濃度を測定する。

❸高Mg血症の場合:腎機能低下がみられることが多いため,血清クレアチニン(Cr)から腎機能の評価を行う。

❹低Mg血症:低Ca血症,副甲状腺ホルモンの

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