診断のチェックポイント
●定義
❶認知症:国際疾病分類(ICD-10)の定義によれば,認知症(dementia)とは,いったんは正常に発達した知的機能が後天的な脳器質性疾患が原因で低下した状態で,認知機能が複数領域(注意,実行機能,学習と記憶,言語,知覚-運動,社会的認知)の障害により日々の活動において自立が障害されている症候群である。意識の混濁はない。
❷軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI):MCIはこれよりも軽症で,認知機能の低下はあるが,日常生活動作は維持されているものであり,この点が認知症と異なる。
❸鑑別すべき疾患:せん妄,うつ病といった偽認知症,妄想性障害,薬物性精神障害などが鑑別の対象となる。
【1】病歴
❶患者から聴取する病歴情報は信頼性に欠けることがあり,家族による患者の観察に基づく情報は重要である。
❷Alzheimer型認知症(Alzheimer disease:AD)の最も初期に現れる徴候の1つはエピソード記憶の障害である。
❸ADの初期の患者,あるいはMCIを示す患者は自身の記憶障害を自覚している場合が多い。
【2】身体所見
❶身体的診察
■以下について異常所見がないか確認する。
・頭髪,皮膚
・眼瞼結膜,瞳孔
・口腔粘膜,咽頭,舌
・頸部,リンパ節,甲状腺,血管雑音の聴取
・脈拍と血圧
・胸部
・腹部
・四肢:皮膚,関節,浮腫の有無。
■身体的診察により見出された所見は,脱毛,甲状腺腫脹,下肢の非圧痕性浮腫(→甲状腺機能低下症),アステリキシス(→肝性脳症),結節性紅斑,口腔内アフタ,陰部潰瘍(→神経Behçet病)など内科疾患に伴う治療可能な認知症の診断につながることがある。
❷神経学的診察
■以下について調べる。
・意識レベル
・認知機能
・脳神経領域
・四肢の運動系
・深部腱反射と病的反射
・不随意運動
・感覚系
・姿勢・歩行
・自律神経系
■神経学的診察で得られた
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/Alzheimer型認知症
- 今日の診断指針 第8版/血管性認知症
- 今日の診断指針 第8版/Lewy小体型認知症
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/2 認知症
- 臨床検査データブック 2023-2024/認知症 アルツハイマー型認知症(AD),(脳)血管性認知症(VaD),レビー小体型認知症(DLB), 前頭側頭葉変性症(FTLD)
- 内科診断学 第4版/知能障害
- 内科診断学 第4版/失語・失行・失認
- 内科診断学 第4版/理解力低下,手指の不随意運動
- 新臨床内科学 第10版/【6】記憶障害
- 新臨床内科学 第10版/【14】認知機能障害
- 今日の診断指針 第8版/Parkinson症候群(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症を含む)
- 今日の診断指針 第8版/多系統萎縮症