診療支援
診断

軽度認知障害(MCI)・認知症
Mild Cognitive Impairment and Dementia
小野 賢二郎
(昭和大学教授・内科学講座脳神経内科学部門)

診断のチェックポイント

定義

❶認知症:国際疾病分類(ICD-10)の定義によれば,認知症(dementia)とは,いったんは正常に発達した知的機能が後天的な脳器質性疾患が原因で低下した状態で,認知機能が複数領域(注意,実行機能,学習と記憶,言語,知覚-運動,社会的認知)の障害により日々の活動において自立が障害されている症候群である。意識の混濁はない。

❷軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI):MCIはこれよりも軽症で,認知機能の低下はあるが,日常生活動作は維持されているものであり,この点が認知症と異なる。

❸鑑別すべき疾患:せん妄,うつ病といった偽認知症,妄想性障害,薬物性精神障害などが鑑別の対象となる。

【1】病歴

❶患者から聴取する病歴情報は信頼性に欠けることがあり,家族による患者の観察に基づく情報は重要である。

❷Alzheimer型認知症(Alzheimer disease:AD)の最も初期に現れる徴候の1つはエピソード記憶の障害である。

❸ADの初期の患者,あるいはMCIを示す患者は自身の記憶障害を自覚している場合が多い。

【2】身体所見

❶身体的診察

以下について異常所見がないか確認する。

頭髪,皮膚

眼瞼結膜,瞳孔

口腔粘膜,咽頭,舌

頸部,リンパ節,甲状腺,血管雑音の聴取

脈拍と血圧

胸部

腹部

四肢:皮膚,関節,浮腫の有無。

身体的診察により見出された所見は,脱毛,甲状腺腫脹,下肢の非圧痕性浮腫(→甲状腺機能低下症),アステリキシス(→肝性脳症),結節性紅斑,口腔内アフタ,陰部潰瘍(→神経Behçet病)など内科疾患に伴う治療可能な認知症の診断につながることがある。

❷神経学的診察

以下について調べる。

意識レベル

認知機能

脳神経領域

四肢の運動系

深部腱反射と病的反射

不随意運動

感覚系

姿勢・歩行

自律神経系

神経学的診察で得られた

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?