診療支援
診断

知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)
Intellectual Disabilities (Intellectual Developmental Disorders)
石塚 佳奈子
(名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科)

診断のチェックポイント

定義

❶米国精神医学会の診断基準〔精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)〕によると,概念的・社会的・実用的からなる複数の領域において,知的機能の遅れと適応機能の障害の両方が18歳未満より認められる状態として定義される

知的機能の遅れとは,臨床評価および知能検査で確認される,年齢の平均値より有意に低い知的能力を指す。

適応機能の障害とは,日常生活や社会生活など,複数の場面において年齢・社会文化的に期待される行動がとれず,継続的な支援を必要とする状態を指す。

❷古くは精神薄弱や精神遅滞,知的障害とよばれていたが,DSM-5の改訂に伴って知的能力障害と変更された。

【1】病歴:幼少期より,期待される発達指標に到達する時期の遅れ,もしくは到達しない状態がみられ,その障害は生涯続く。一般に進行性ではないが,Rett症候群など進行性の経過を示すものもある。

❶全般的な発達の遅れ

言語発達と粗大運動発達の遅れが指標となる。始語や始歩(通常1歳半まで),2語文の出現(通常3歳まで)などの遅れを乳幼児健診で指摘されることが多い。

軽度の知的能力障害の場合は乳幼児期の病歴が顕著でなく,就学後に,語彙力の少なさ,言語表出および言語理解の乏しさ,協調運動の苦手さ,不器用さなどから気づかれることもある。

❷概念的領域の障害:同年齢と比べて大小・長短・数・時間・金銭などの概念を理解することが難しい・就学後に問題が目立ってくる例も多い。

❸社会的領域の障害

その人の年齢において期待される他者との関係性が構築できない。

幼少期では,子ども同士での遊び(通常3歳),集団行動への参加(通常4歳),決まりを理解して守ること(通常5歳)の困難さがみられる。

❹実用的領域の障害:食事・更衣・排泄・入浴など,身の回りの自立度が同年齢に比べて低い。

❺既往症:遺伝学的状態,胎児期の感染症や薬物への曝露,

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