診断のチェックポイント
●背景:抑うつ状態は臨床各科の外来や病棟で最も高頻度に認められる症状の1つである。その背景はさまざまで,心理社会的要因から脳科学的および身体的要因までに広がるが,便宜的に以下の3段階に階層化すると整理しやすい。
❶主として心理環境要因により生じるもの:癌の告知や近親者の死に直面したときに誰でも一時的に抑うつ的となる。心理環境要因によって反応性に生じる抑うつ状態は,誰でもが日常生活で経験する憂うつ,不安,落胆などと質的には大きく異ならない。ただし心理環境要因の軽重によって,また元来の性格傾向によって,症状の性質,程度,持続期間が左右される。ストレス反応,適応障害,心因性うつ病などはここに含まれる。
❷主として脳機能変調により生じるものであり,精神科領域では伝統的に内因性とよんでいたもの:うつ病と双極性障害抑うつエピソードが該当し,病態の基盤にはセロトニン系やノルアドレナリン