緊急処置
【1】興奮を鎮める必要がある場合:内服に協力できなければハロペリドールの静注(点滴投与も含む)あるいは筋注を行う。量は,年齢・体格などによるが,初回5分の1アンプル~1アンプルの範囲が一般的である。
【2】せん妄の機序精査に頭部CTやMRIを必要とするが協力を得られない場合:ミダゾラムによる鎮静を行う。その際,拮抗薬フルマゼニルを用意する。
診断のチェックポイント
❶覚醒度が低下して注意や見当識の障害が急性に発症し,視覚優位の幻覚や錯覚を伴い,短時間のうちに変動する(図1図)。夜間に出現・増悪することが多い。
❷睡眠覚醒サイクルの障害はほぼ必発である。
❸低活動型では,不安,抑うつ,無欲様顔貌といった症状が表面的には目立つ。
●定義:せん妄の診断のゴールドスタンダードは,米国精神医学会の診断基準DSM-5である。表1図の項目を満たすことが必須である。
【1】病歴
❶急性発症であるかを確認する。一般にせん妄は急性エピソードとして発症する。
❷発症前の自立度,認知症の有無,せん妄既往の有無を確認する。
❸せん妄を惹起しうる身体疾患はあるかを確認する(図2図)。
❹飲酒習慣や依存物質使用の有無,オピオイド,グルココルチコイド,ベンゾジアゼピン受容体作動薬などの常用薬剤や至近で服用した薬剤・注射剤の有無を確認する。
【2】身体所見:せん妄に特有の身体所見はないが,次の精神症状の観察が重要である。
❶微細な意識の曇りを見抜く。
■そのために見当識障害の有無の確認は必須である。しかし,発症前から認知症がある場合,見当識障害は指標になりにくい。
■そこで,注意に関する観察が重要になる。注意が向くか,維持できるか,固着しないかといった項目を応答の仕方を通して観察する。
❷せん妄時の記憶は欠損,あるいは断片化していないか。あるいは歪んで記憶されていないか。
❸視覚優位の幻覚や錯覚を伴っていないか。
【3】検査
❶せん妄惹