緊急処置
【1】急性閉塞隅角緑内障発作による瞳孔散大:可及的すみやかにレーザー虹彩切開術などの処置が必要。2%ピロカルピンを1回だけ点眼,炭酸脱水酵素阻害薬(250mg)を1錠内服させ,緊急に眼科に紹介する。
【2】急性発症の動眼神経麻痺が疑われる場合:脳動脈瘤が原因の可能性があるため,すぐに脳神経外科医へ紹介する。
【3】頭頸部外傷後急性発症のHorner症候群が疑われる場合:外傷性内頸動脈解離が原因の可能性があるため,すぐに脳神経外科医へ紹介する。
【4】ぶどう膜炎による瞳孔異常が疑われ,特に前房蓄膿を合併している場合:すぐに眼科を受診させる。
【5】中脳背側症候群が疑われる場合はMRIを撮る。
診断のチェックポイント
●定義:瞳孔異常とは,瞳孔不同と形態の異常である。
【1】病歴
❶強い眼痛,頭痛がないか,充血はないか,視力低下はないか,虹視症がないか(→急性緑内障発作)。
❷いつ気づいたか,頭痛がないか,物が2つに見えないか,眼瞼下垂はないか(→急性動眼神経麻痺)。
❸眼痛,頸部痛がないか,充血はないか,外傷の既往がないか(→頭頸部外傷後急性発症のHorner症候群,外傷性散瞳)。
❹頭頸部手術,悪性腫瘍の既往がないか(→腫瘍による圧迫性Horner症候群)。
❺ふらふら感がないか(→延髄外側症候群に伴うHorner症候群)。
❻眼精疲労,羞明がないか(→瞳孔緊張症)。
❼羞明,飛蚊症,直近の眼科手術歴がないか(→ぶどう膜炎)。
❽直近の眼科受診歴がないか(→薬剤性散瞳)。
❾生まれてすぐに気づいたか(→先天瞳孔異型)。
【2】身体所見
❶対光反射
■悪い場合,瞳孔の大きいほうが悪い(括約筋麻痺)ことが考えられるため,さらに下記のように絞り込む。
・眼圧測定(→高ければ急性緑内障発作)。
・外眼部観察,眼球運動観察(→眼瞼下垂),内転,上転,下転制限あり(→動眼神経麻痺)。
・輻湊反射の有無(→両眼性対光-近見