緊急処置
【1】脳動脈瘤が原因となる動眼神経麻痺の可能性があれば,間もなくくも膜下出血発症の危険があるため,直ちに脳動脈瘤に対する治療を考慮する。
【2】全身型重症筋無力症の徴候が認められれば,神経内科での早急な診断・治療が必要となる。
診断のチェックポイント
●定義
❶複視とは:同じ像が2つ見えることをいう。複視には単眼複視と両眼複視がある。後者は片眼遮閉で消失するが,前者は消失しないため,症状の聴取からこれらは区別できる。
❷複視の原因:単眼複視は屈折異常(乱視)や前眼部(角膜)・中間透光体(水晶体)など,眼球の前眼部の異常に伴うことが多く,両眼複視は眼窩や脳に原因がある。
❸両眼複視:通常,複視というと両眼複視を指すことが多い。両眼複視は網膜対応(両眼視機能の一種)が正常な人においては,眼位ずれ(斜視)が原因であり,眼位ずれが大きいほど,2つの像の間の距離も大きくなる。ただし,眼位ずれがあっても,視力や両眼視が不良の場合,網膜対応異常がある場合,眼瞼下垂がある場合,斜視角が非常に大きい場合などには複視がないこともある。
【1】病歴
❶恒常性か,間欠性か,一過性か:間欠性の複視で眼瞼下垂がみられ,瞳孔異常がない場合には重症筋無力症の可能性を考える。輻湊けいれんでは間欠性の複視があり,斜視角にも変動がある。
❷水平性か,垂直性か,斜めか:末梢性眼球運動障害であれば,障害のある外眼筋の特定につながる。また,眼位と照合することによって,両眼複視であることを確認できる。
❸一眼の像に傾きがあるか:あれば眼球回旋作用の強い斜筋(特に上斜筋)の異常が疑われる。
❹遠見と近見ではどちらが症状が強いか:外転神経麻痺や開散麻痺では近見よりも遠見で複視の症状が強い。輻湊不全では近見時のみに複視を訴える。
❺視方向や頭位によって2つの像の距離が変わる(非共同性)か:麻痺性斜視では麻痺筋の作用方向を向くときに複視は悪化