診断のチェックポイント
●定義
❶変視とは,ものが歪んで見える状態(歪視)を指すことが多いが,ものが小さく見える小視やその逆の大視も含まれる。
❷中心暗点とは,視野の中心が見えにくいことをいい,必ずしも中心が全く見えない状態(絶対暗点)を指すわけではなく,中心がぼやけて見えにくい,色づいて見えにくいなど暗点の程度はさまざまである。
❸変視や中心暗点の多くが網膜の構造変化に伴って生じる。
❹変視は「quality of vision」を損なうため早期の適切な対処が望ましいが,原因疾患の治療を行っても残存することが少なくない。
【1】病歴
❶いつから変視や中心暗点を自覚するようになったのか,片眼性か両眼性か,どのくらいの程度や範囲なのか,経過中の悪化の自覚があるかどうかなどを聴取する。
❷変視と中心暗点が混在している場合も少なくなく,丁寧な問診が必要である。
【2】身体所見
❶変視や中心暗点は,主として網膜,特に黄斑部網膜の形態異常(浮腫,円孔,網膜剝離など)によって生じることが多いため,通常外観から原因の判定はできない。
❷Vogt-小柳-原田病に伴う変視の場合は,髄膜炎症状,難聴に加えて皮膚の白斑,白髪,脱毛を伴うことがある。
【3】検査
❶自覚検査
■アムスラーチャート
・5mm四方の小さいマス目を有する10cm四方のチャートであり,オリジナルは黒地の背景に白い線でマス目が書かれている(図1図)。
・被験者は目から30cm程度の距離にチャートを置き,片目ずつで中心にある点を見ながら,線のゆがみや欠けの有無を答える。
・セルフチェックにも用いることができる。
・簡便で優れた検査法であるが,定量評価はできない。
■Mチャート
・変視を定量的に評価できるチャートである。
・検査視標は直線および点の間隔が視角0.2~2.0度までの19種の点線からなり,被験者は中心点を見ながら歪みがなく直線に見える最小の間隔の点線を選ぶ。