診療支援
診断

人工内耳
Cochlear Implant
河野 淳
(東京医科大学教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

人工内耳とは

 人工内耳とは,両側高度難聴者の内耳蝸牛に電極を植え込み,聞こえを取り戻す(先天性の場合には聞こえを獲得する)治療法である(図1)。わが国では1985年から臨床応用され,1994年に保険適用(機器一式の保険点数は275,000点,現在は260,700点)となり,現在まで延べ約17,000人,年間1,200人の装用者がいると考えられる。

 2000年以降は,新生児聴覚スクリーニング検査の普及や機器の進歩などにより小児,特に先天性高度難聴への応用が増加し,その有効性が明らかとなっている。

内言語の獲得と人口内耳

 音声言語の理解には,聴覚認知のための聴覚刺激による内言語が必要である。この内言語の獲得は脳の聴覚・言語に関する発達・成長に伴うもので10歳頃までに完成し,敏感期(most sensitivity period,通常2~4歳頃)が存在するので,適切な時期に刷り込み(imprinting)が必要不可欠である。

 一度内言語を獲得した言語習得後難聴者(5歳以降くらいの難聴)の場合には,通常人工内耳による聴取は良好である。しかし,内言語を獲得していない言語習得前難聴,特に先天性高度難聴児では,ことばを獲得し,話すためには,敏感期以前に言語を聞き取らせる必要がある。つまり,先天性高度難聴児では早期に人工内耳の装用が必要となる。

人工内耳の原理

 人工内耳は,体内に植え込まれる体内装置(インプラント)と音声を分析し体内装置へ電磁波で伝える体外装置からなる(図2)。

【1】体外装置:通常スピーチプロセッサといい,マイクロホンから入った音声を解析し,コード信号として体内装置へ送信する。

【2】インプラント

❶インプラントは蝸牛内に植え込まれる電極と受信コイルからなる。電極はメーカーにより12~22個の刺激部位をもち,体外装置で解析されたコード信号を電気信号に変換して電流を流し,蝸牛内の

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