診療支援
診断

鼻出血
Epistaxis
池田 勝久
(順天堂大学主任教授・耳鼻咽喉科学講座)

緊急処置(図1)

【1】全身状態の確認

❶まず,バイタルサインを迅速にチェックすることが求められる。また,上部消化管からの出血を除外する。

❷重篤な貧血の臨床症状・所見(結膜蒼白,精神不穏,低血圧,頻脈,低体温)では,血管を確保し輸液を開始する。適時,止血薬を投与する。

❸同時に,血液検査や血液型適合検査ののち,必要があれば輸血を行う。

❹後方からの血液の咽頭への流入を認めた場合には,呼吸困難の有無を確認し,側臥位として気道を確保する。重篤な呼吸困難では挿管を必要とすることもある。

【2】前方と後方出血の鑑別

❶前方出血

大部分の鼻出血の部位は鼻中隔前方のKiesselbach部位であり,坐位の状態では前鼻孔から血液が流れる。

多量の出血が持続する場合は,やや頭部を前屈させた状態で,冷却した生理食塩液で鼻腔洗浄する。これによって,出血の減少や止血が期待され,その後の処置が行いやすくなる。

❷後方出血

しかしながら,後方からの出血では前鼻孔から血液が流出せず,多量の血液が後方から咽頭へ流出し止血が困難である。

この場合は血管と気道を確保して,専門医への紹介が必要である。

【3】鼻翼圧迫:前方からの出血では5,000倍アドレナリン液を浸した綿球を挿入して,鼻翼を手指で10~15分間圧迫する。

【4】前鼻パッキング:鼻翼の圧迫で制御できない場合,前鼻孔から鼻腔深部に軟膏付きガーゼや膨張性素材(ポリビニルアルコールなど)でパッキングする。耳鼻咽喉科の専用の器具が必要である。

【5】後鼻パッキング:後方からの大量の出血の際に用いられる。専用の鼻出血用バルーンやFoleyバルーンに生理食塩液で7~10mL注入して後鼻孔を閉鎖した後に,鼻内をガーゼパッキングする。高血圧が合併している場合には降圧薬による血圧の制御も必要である。

【6】焼灼術:10%硝酸銀溶液を綿球につけて,出血部位の周囲から出血点に向かって4

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