診療支援
診断

味覚障害
Taste Disorder
大島 猛史
(日本大学教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野)

診断のチェックポイント

定義:味覚に何らかの異常が生じる病態であり,その症状から表1のように分類される。

【1】病歴

❶いつから,どんな症状を自覚したのか:病悩期間が長い例は予後不良となりやすい。

❷発症の契機があったか:感冒罹患の有無(→感冒性味覚障害),中耳手術・扁桃手術・歯科治療など(→医原性味覚障害),脳血管障害・外傷など(→中枢神経障害),心的ストレスの有無(心因性味覚障害)。

❸持病の有無と常用薬の確認:糖尿病や消化器疾患,肝腎機能障害などの全身疾患は,味覚障害の原因となる。また,それらの治療薬は,薬物性味覚障害の原因となりうる。

❹舌痛,口腔乾燥,嗅覚障害の合併はないか:味覚の異常を訴えるが実際には味覚の低下がなく,嗅覚障害が原因のものを風味障害という。

❺自覚症状の程度をVAS(visual analogue scale)で聴取しておくと,治療効果の判定に役立つ。

【2】身体所見

❶口腔内所見:舌炎,舌苔,口腔内乾燥の有無などを観察する。

【3】検査

❶血液一般・生化学検査:貧血,肝腎機能障害の有無。

❷微量元素測定:血清亜鉛,銅,亜鉛など。

 日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針2018」では,血清亜鉛値が60μg/dL未満を亜鉛欠乏症,60~80μg/dLを潜在性亜鉛欠乏と定義している。

❸舌苔培養(→口腔内真菌症)。

❹唾液量測定:安静時唾液量(10分間の唾液量),ガムテスト(10分間ガムを咀嚼したときの唾液量)(→Sjögren症候群など口腔内乾燥症)。

❺味覚機能検査:現在本邦で保険適用となっているのは,電気味覚検査とろ紙ディスク法である。左右両側の鼓索神経領域・舌咽神経領域で測定する。

❻心理検査:自己評価式抑うつ性尺度(Self-rating Depression Scale:SDS),CMI健康調査(Cornell Medical Index),状態特性不安検査(St

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