緊急処置
【1】急性発症の不明瞭発話や発話停止は,脳虚血を疑い,神経学的評価と脳画像(CT・MRI)撮影を行う。
【2】薬物・中毒による場合には,胃洗浄,血液透析により,解毒をはかる。
診断のチェックポイント
●定義
構音と言語は,社会生活に欠かせない機能である。
❶構音:言葉を音声信号に変換する過程を指し,脳・神経系と口腔・咽喉頭の構造と感覚運動が関与する。呼気を動力源に声や雑音を作り,構音器官(唇顎・舌・軟口蓋・声帯)の高速運動により正確な言語音(母音・子音)を連ねた語を生成する。構音は,内在する言語の窓となる(図1図)。
❷構音障害:音の誤りにより語が正確に相手に了解されない状態である。発達途上の構音の誤りや誤った構音操作(側音化構音などの異常構音)を含む機能性構音障害(語音症),先天性の形態異常や口腔中咽頭癌に伴う呼気の鼻漏れや構音困難(器質性構音障害),神経系の異常による運動障害性構音障害(dysarthria)がある。Dysarthriaは,臨床特徴と損傷部位により,痙性麻痺(一側・両側性の錐体路・皮質延髄路損傷),弛緩性麻痺(脳幹の脳神経核,末梢神経・筋機能低下),失調性(小脳回路機能低下),運動低下性・過多性(大脳基底核機能低下),混合性に分類される。
❸言語:言語は,聴覚・視覚入力,大脳の情報処理と認知機能を基盤に獲得され,生涯発達する。聴覚,脳(知的能力),言語環境が整えば,自然に学習される(図1図)。言語を司るのは大脳(優位半球,主に左半球)の言語野と関連する領域を結ぶ連合線維で,聴覚・視覚入力を受ける側頭回・後頭回との連絡により,言語機能を担っている。
❹言語障害:言葉の表出や理解が困難な状態で,語彙の不足,語想起困難や言い間違い(錯語),語の一部の繰り返し(保続),オウム返し(反響言語),構文と語用面での正常(発達)からの逸脱を指す。
■小児:知的能力障害や発達障害