診療支援
診断

嗄声・音声障害
Hoarseness/Dysphonia
原 浩貴
(川崎医科大学主任教授・耳鼻咽喉科学)

診断のチェックポイント

定義:音声障害とは,音質,声の高さ・大きさ,発声努力などの変化により,コミュニケーションを損なう,あるいは声のQOLが低下することをいう。このうち,音質に問題がある場合を嗄声とよび,音声障害のうちで最も多い。

【1】病歴:受診の動機,音声障害の状態,症状発現の契機と経過,随伴症状,社会生活習慣,生活歴,既往歴,服薬の内容などを聴取する。

❶受診動機:患者自身が音声障害を感じているか,他者から指摘されているか,両者か。

❷発症の契機・経過

先行する上気道炎,喉頭や頸部への外傷,音声酷使,心理的ストレスの有無などを確認する。

経過として,突然の発症か,徐々に増悪したか,経過中の改善・増悪や日内変動の有無などを聴取する。

❸随伴症状:咳嗽,咽頭痛,喘鳴,嚥下障害などの有無を聴取する。

❹社会生活習慣:誤った発声習慣(誤用),発声にかかわる不適切な行動(乱用)の有無の確認が必要であり,音声酷使を伴う職業か,騒音環境での会話や電話の使用頻度など,声の使用状況の聴取が必要である。

❺喫煙・飲酒の習慣

❻既往歴

反回神経麻痺や上喉頭神経麻痺による音声障害をきたす可能性のある手術:甲状腺手術,頸部の手術,心臓手術,大動脈手術,縦隔・胸部手術,食道癌手術などの手術歴。

気管挿管の既往。

音声障害をきたす疾患:脳血管障害や神経・筋疾患(Parkinson病,多発性硬化症,重症筋無力症など),膠原病の既往。

喉頭が照射野に入る放射線治療の既往。

男性ホルモンや蛋白同化ステロイド投与の有無。

【2】身体所見:喉頭所見の確認が必須である。喉頭形態の観察方法として,間接喉頭鏡検査,喉頭軟性内視鏡検査,喉頭硬性内視鏡検査,直達喉頭鏡検査などがある。

❶喉頭軟性内視鏡検査

今日の耳鼻咽喉科外来では喉頭軟性内視鏡検査が主流となっている。

声帯・披裂部の動き,声帯粘膜の色調や平滑さ,発声時の声門間隙の有

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