緊急処置
項部硬直を認める救急疾患にくも膜下出血や髄膜炎がある。
【1】くも膜下出血:突然発症の激しい頭痛で局所神経症状を伴わない意識障害患者において項部硬直があればくも膜下出血を疑い,絶対安静を保って呼吸状態を確認しながら頭部CTやMRI検査を実施する。
【2】髄膜炎:直ちに抗菌薬,抗ウイルス薬投与による加療が必要となる。発熱を伴う項部硬直では髄膜炎の可能性を考え,うっ血乳頭など,頭蓋内圧亢進の有無に注意して髄液検査を行う。
診断のチェックポイント
●定義:項部硬直は髄膜刺激徴候の1つである。髄膜炎やくも膜下出血の際には,髄膜や,髄膜を貫通する神経根部に炎症や浮腫が生じ,被刺激性が亢進する。脊髄神経根は頸部前屈や,膝伸展のまま股関節を屈曲させると脊髄硬膜の内・外で伸展・緊張することが知られている。髄膜炎やくも膜下出血では神経根の被刺激性が増しており,この状態の患者の頭頸部を他動的に前屈させると,髄膜や神経根部の緊張が増強し疼痛が誘発され,同部にかかる緊張を最小限にしようと後頭部および頸部の筋肉が反射的に緊張して抵抗が生じる。この防御反応を項部硬直という。
【1】病歴:発症様式の確認は重要である。急性の経過か慢性の経過か,随伴症状として発熱があるかどうか,激しい頭痛があるかどうか,意識障害や局所神経症状があるのかなどをチェックする。
❶急性の場合:髄膜炎やくも膜下出血が見落としてはならない疾患である。
❷慢性の場合:他の髄膜刺激徴候がないかどうかも確認し,頸部の運動制限や筋緊張の異常を呈する頸椎症やParkinson病,偽痛風などの除外診断も行う。
【2】身体所見
❶前屈・回旋時の抵抗:被検者を仰臥位にし,頭を両手でかかえて前屈し,次に左右に回旋させる。前屈のときには抵抗の増大があるが,回旋では抵抗がないのは髄膜刺激による項部硬直である。正常では下顎が前胸部につくまで前屈できる。頸椎症やPa