診療支援
診断

頸肩腕痛
Neck-Shoulder-Arm Pain Syndrome
大川 淳
(東京医科歯科大学大学院教授・整形外科学)

緊急処置

【1】急性の頸部痛:慢性的な頸部痛の多くは椎間板障害や椎間関節障害によるものであり,まれにある感染以外に緊急的な処置が問題になるケースは少ない。しかし,急性頸部痛では特発性硬膜外血腫の除外が重要である。特発性硬膜外血腫では,頸部痛の急激な発症に続き,1日以内に四肢運動障害が進行性に出現する。悪化傾向があれば,発症同日内の緊急手術を適応しないと恒久的な完全麻痺に陥る。

【2】進行性の四肢麻痺:頸部痛発生後,1週間程度で進行性に悪化する四肢麻痺は,頸椎症性脊髄症や椎間板ヘルニアの可能性があり専門医へ紹介する。

診断のチェックポイント

定義:頸肩腕痛は頸部から上腕にかけての痛みを指す。一般には頸部の痛みが中心症状であり,それに後頭部痛や肩から上腕,手指までの上肢症状を伴うかがポイントとなる。ただし,上腕までの痛みは頸椎由来の放散痛の可能性が高く,神経根障害では手指までしびれる。肩から上腕の痛みでも,頸部痛を伴わない場合には肩関節由来がほとんどである。

【1】病歴

❶激烈な頸部痛から始まり,引き続いて四肢神経症状が出現し,しびれ運動麻痺を呈するまでの期間が1日以内ならば特発性硬膜外血腫を考える。進行性の神経症状では緊急手術の適応となる。

❷軽微な外傷後,1週間~1か月で,四肢神経症状が出現した場合には,頸椎症,椎間板ヘルニアや頸椎後縦靱帯骨化症に基づく脊髄症の急性増悪を考える。不全麻痺の悪化があれば手術が必要となる。むち打ち損傷後でも同様の経過をたどることがあり,注意が必要である。

❸超高齢者では無症候性のびまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)の合併に留意する。DISHは,前縦靱帯骨化により4つ以上の脊椎骨が一体化した状態と定義される。軽微な外傷後に頸部痛が持続あるいは増強する場合には,受傷直後に単純X線写真

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