診断のチェックポイント
●定義
❶ばち指とは,手指および足趾が太鼓のばち状に丸く膨らむように変形した状態をいう(図1図)。爪と指の形状から診断されるが,Lovibond角が180度以上になる。
❷古くは,ヒポクラテスが膿胸,進行した肺結核の患者で最初に記述したとされており,ヒポクラテス爪,あるいは時計皿爪ともよばれる。
❸成因として,血小板由来増殖因子(PDGF)や,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの体液性増殖因子が指先のうっ滞に伴う動静脈シャントによって不活性化が抑制され,結合組織の過形成を生じるという仮説があるが,ばち指が起こるメカニズムは十分に明らかにはなっていない。
【1】病歴:いつから出現したかの聴取は重要である。成人期に発症した場合は,肺癌,化膿性肺疾患に随伴した所見である可能性があり注意が必要である。咳,痰,発熱などの有無を聴取する。
【2】身体所見
❶遠位指節間関節から末端が太くなり,肥大した指先を爪が大きく囲むように隆起する。
❷爪は先端に向かい鳥のくちばし状にカーブする。
【3】検査:単純X線検査,胸部CTなどで評価する。
原因疾患と頻度
【1】呼吸器疾患
❶わが国の特発性肺線維症患者の67%にばち指がみられる。
❷慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)のみではばち指はそれほど高頻度ではない(18~33%)。
❸肺炎や喘息などの肺疾患単独でばち指を認めることはまれである一方,肺癌では60%と高い。ばち指の存在が,肺癌などの重篤な疾患を発見するきっかけにもなることから,見落としてはいけない重要な身体所見の1つである(表1図)。治療とともに可逆性にばち指の所見も消失することも報告されている。
【2】チアノーゼを伴う先天性心疾患,炎症性腸疾患,肝硬変:炎症性腸疾患では,Crohn病の38%,潰瘍性大腸炎の15%に認める。