診断のチェックポイント
【1】病歴
❶「しびれ」は多義的な言葉なので,患者の訴える「しびれ」が何を指すのかを明らかにすることが病歴聴取の出発点となる。
■「しびれ」が感覚の症状を指すとは限らず,運動障害を「しびれ」と表現する患者が特に高齢者に多い。
■「感覚がない」と訴える患者によく聞くと「動かす感覚がない」ことであって,結局運動障害であったということもある。
❷感覚の自覚症状としての「しびれ」は,1)何もしなくても感じられる自発的異常感覚,2)触ったときなどに異常な感覚が誘発される・あるいは感覚が変容する錯感覚,3)触ったなどの感覚が鈍い感覚鈍麻の自覚に分けられる。
❸これらをさらに,「びりびりする」「ぴりぴりする」「じーんとする」「一枚皮がかぶったよう」「足の裏に何かがくっついたよう」「砂利の上を歩くよう」などさまざまに言い換えをしてもらって,「しびれ」の性質を明確化する。
❹しびれを感じる部位,突然発症なのか・徐々に増悪しているのか・1日のいつ強いかなどの時間的プロファイル,誘発・軽快因子,しびれに随伴する症状についても尋ねる。
【2】身体所見
❶感覚検査としては,痛覚,温度感覚,触覚,振動覚,関節運動覚,位置覚などを通常調べて,感覚脱失/鈍麻・低下,感覚過敏などを記載する。
❷温痛覚と深部感覚の一方のみが障害される場合を解離性感覚障害(感覚解離)とよび,しばしば診断の手がかりとなる。
❸触ったときなどの異常感覚(錯感覚)も立派な他覚的な感覚障害であり,容易に調べることができて有用である。
❹特に異常感覚を含む感覚障害の範囲を明確にすることが診断に役立つ。
■末梢神経性か,髄節性(皮節に一致)かなどに注意する。
■解剖学的に説明困難な感覚障害範囲(例えば,足首にきれいな線を描いたような境界を有するなど)はヒステリー性を示唆する。
❺より大まかな感覚障害の分布も,診断の重要な手がかりとなる(図1図)