緊急処置
【1】失神の多くは受診時には回復しており緊急処置を要することは少ない。
【2】失神の原因としておよそ10%にみられる予後不良な心原性失神の場合には,静脈確保,酸素吸入,投薬などの緊急処置が必要。
診断のチェックポイント
【1】失神は一過性意識消失(transient loss of consciousness:TLOC)をきたす病態であり,その原因も多岐にわたるため,系統的な診断が必要(図1図,表1図)。
【2】心原性失神をはじめとするハイリスク患者の抽出が最も重要である。
●定義:脳全体の一過性灌流低下のために,急激に発症する,短時間の,自然にかつ完全に回復する,意識消失と定義されている。意識障害が遷延する場合は失神とはいわない。
【1】病歴
❶病歴は失神の診断において最も重要である。
❷失神以外の意識障害(てんかん,精神疾患,代謝疾患,盗血症候群など)を除外する。
❸失神の3つの病態(反射性,起立性低血圧,心原性)に特徴的な前駆症状,随伴症状を確認する。
❹長時間の不動的な立位で気分不良の前駆症状を伴う失神や強い驚愕のあとに起こる場合は血管迷走神経性失神を疑う。
❺典型的な状況(排尿後,食後,悪心・嘔吐,咳嗽など)が関係すれば状況失神の可能性が高い。
❻降圧薬・利尿薬の服用があれば循環血液量減少,糖尿病やParkinson病などがあれば自律神経調節障害が原因の起立性低血圧による失神を疑う。
❼動悸や胸痛が失神の前に先行すれば不整脈や虚血性心疾患を,大動脈弁狭窄症,閉塞性肥大型心筋症,肺塞栓症などの器質的心疾患も特徴的な病歴があり心原性失神を疑う。
❽突然死の家族歴の有無も診断の参考になる。
❾救急部門を受診する転倒患者には必ず失神の有無を問う。
【2】身体所見
❶失神回復後の身体所見をとることが多い。
❷起立性低血圧による失神が疑われる身体所見:仰臥位での血圧や脈拍などのバイタルサインは正常である