脈拍は特別な機器を必要とせず,脈拍数とリズム不整と脈拍の性状(触れかた)が評価できる身体診察の基本である。10秒間程度で可能であり,救急現場では全身状態把握の窓口にもなる。
診断のチェックポイント
【1】リズム
❶規則正しければ整脈,不規則であれば不整脈である。
❷自律神経機能が保たれていると吸気時に頻脈傾向,呼気時に徐脈傾向となる。若年者ではその傾向が強い。
❸脈不整については,規則的な脈でありながら時々抜けるか,絶対的不整(心房細動)かを確認する。
❹脈が抜けるのは心房ないし心室期外収縮で脈拍欠損となる場合と,伝導されない心房期外収縮,第2度房室ブロック,洞停止ないし洞房ブロックなどが鑑別に挙がる。
❺脈をみながら心音を確認し,抜けるタイミングの前に心音が聴取されれば期外収縮である。絶対的に不規則であれば心房細動を考える。
【2】頻脈,徐脈
❶心電図診断で汎用されているミネソタコードでは,洞調律でも100/分以上を洞性頻脈,50/以下を洞性徐脈としている。しかし,筆者らの健診施設での成人で洞調律の平均安静時心拍数は約62±10(1SD)/分であり,85/分以上は何らかの異常による頻脈と考えて対応する。
❷規則的な徐脈(50/分以下)の場合は洞徐脈,心房ないし心室期外収縮の2段脈ないし完全房室ブロックである。この場合も脈をみながら心音を聴診する。期外収縮であれば心音を聴取する。
❸完全房室ブロックでは大砲音を聞くので,身体診察で鑑別がつく。心室に伝導されない心房期外収縮の2段脈と洞徐脈の鑑別はつかない。
❹洞徐脈は,生理的範囲内のこともあるが,スポーツ心臓,洞不全症候群,甲状腺機能低下症などで認められるほか,薬剤性のこともあり,β遮断薬,ジギタリス,ジルチアゼム,ベラパミル,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(認知症治療薬)などの服薬を確認する。
❺規則的な頻脈は,緊張によるほか,心不全,心タンポ
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