診断のチェックポイント
●定義
❶右心不全の身体所見の1つで,右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血により,頸静脈が拡張した状態を示す。ほかの右心不全所見として,下肢浮腫,肝腫大,腹水貯留,肝胆道系酵素の上昇などを認める。
❷右心不全の自覚症状として,右季肋部痛,食思不振,腹満感,心窩部不快感が挙げられる。
【1】病歴
❶右心不全症状の病歴聴取:いつから下肢浮腫が出現してきているか,両側か片側かなど右心不全症状がいつ頃から出現してきたか。
❷左心不全症状の病歴聴取:左心不全症状はないか,すなわち,呼吸困難感,息切れ,頻呼吸,起坐呼吸がないか,あるならいつから出現しているか。
【2】身体所見
❶急性心不全を呈すると,左室拡張末期圧の上昇に伴い,右房圧の上昇,肺静脈圧の上昇,さらに右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血を認める。
❷まず,頸静脈怒張を呈している場合,他の右心不全所見をチェックする。すなわち,下肢浮腫,肝腫大,肝頸静脈逆流の有無をチェックする。
■浮腫の分布,両側性か片側性か:片側性なら静脈血栓症など右心不全以外のものを考慮する。
■浮腫が発熱や発赤を有している場合:血栓性静脈炎などを疑う。
❸頸静脈怒張や下肢浮腫以外の症候の合併があるか,左心不全の身体所見を評価する。
■湿性ラ音(→左心不全)
■喘鳴(→左心不全)
■ピンク色泡沫状痰(→左心不全)
■Ⅲ音やⅣ音の聴取(→左心機能低下)
■奇脈,Kussmaul徴候(吸気時に観察される頸静脈拡張)(→収縮性心膜炎,心タンポナーデ)
❹静脈圧の推定:上半身を45度挙上した状態で,胸骨角から内頸静脈拍動(頭側)の頂点までの垂直距離を計測する。胸骨角は右房から約5cm上方にあり,胸骨角から内頸静脈拍動までの垂直距離が3cm以上あれば静脈圧が上昇していると考える。
❺左心不全および右心不全の両所見が認められる場合は,両心不全と考える。左心不全所見に乏しい場合は,肺疾患・