緊急処置
【1】気道・血管確保
❶大量喀血では,窒息死の危険があるため,気管挿管による気道確保と血管確保を行い,酸素投与と血管強化薬カルバゾクロム(アドナ®注)やトラネキサム酸(トランサミン®注)の投与を行う。
❷出血側がわかる場合は,患側を下にした側臥位をとり,健側への血液の流入を防ぐ。
❸胸部X線,CT検査を行い出血の原因や部位を診断する。
❹肺結核が疑われる場合はN95マスクを着用し対応する。
【2】気管支鏡
❶随時,気管支鏡を用いて血液を除去し,気道閉塞を防ぐ。
❷出血部位が確認できたら,出血部気管支に気管支鏡をウェッジし,冷生理食塩液で反復洗浄するか,トロンビン液(トロンビン末1万単位を5~10mLの生理食塩液に溶解)またはアドレナリン希釈液(ボスミン®外用液0.1%を20倍希釈)を2mLずつ注入する。
❸止血困難な場合は,バルーンカテーテルを用いた止血を試み24~48時間留置する。あるいは,健側への片肺挿管を行う。
【3】血管造影および塞栓術:気管支動脈造影を行い,責任血管にゼラチンスポンジあるいはコイルなどにて塞栓術を行う。
【4】止血困難な場合:外科手術も考慮する。
【5】びまん性肺胞出血の場合:約3分の1の症例では喀血を認めないが,呼吸不全が進行するため,原因疾患に応じてステロイドや免疫抑制薬の投与,血漿交換などを迅速に行う。
診断のチェックポイント
まずは,出血が喀血であることを確認する。鼻腔,口腔,咽喉頭,消化管からの出血を除外する。出血が鮮紅色でなく暗赤色な場合は,吐血の疑いがある。
●定義
❶喀血:喀痰に血液が混入する場合を血痰といい,下気道から血液そのものが喀出される場合を喀血という。鼻腔,咽頭喉頭,口腔,歯肉からの出血や消化管からの出血を嘔吐する吐血との鑑別が必要である。
❷大量喀血:一般的に出血量が100mL/時以上,あるいは500mL/日(100~1,000mL/日とさま