診療支援
診断

呼吸不全
Respiratory Failure
巽 浩一郎
(千葉大学教授・呼吸器内科学)

緊急処置

【1】呼吸不全には急性と慢性があるが,急性呼吸不全および慢性呼吸不全の急性増悪では迅速かつ適切な処置が必要である。呼吸不全の原因疾患,基礎病態によりその対処を考慮する必要がある。

【2】急性呼吸不全は単に時間的経過を意味するだけでなく,その病態は刻々と変化し,迅速な対応が要求される異常状態と理解しなければいけない。

【3】急性呼吸不全では経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の値からその存在が推定された場合には,検査と同時に治療を開始する。

診断のチェックポイント

定義

❶呼吸不全とは,「動脈血液ガスが異常な値を示し,そのために生体が正常な機能を営みえない状態」と定義される。室内気吸入時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr以下となる呼吸器系の機能障害,またはそれに相当する異常状態である。

❷呼吸不全には下記が含まれる。

呼吸器系の機能障害(肺病変による酸素摂取・炭酸ガス排出障害)

循環機能障害(心拍出量の低下)

末梢組織への酸素運搬障害(貧血)

組織呼吸障害(CO中毒)

肺の呼吸不全から二次的に派生する多臓器不全

❸低酸素血症を伴わない組織低酸素症の成因として,以下のものが挙げられる。

anemic hypoxia(貧血)

circulatory hypoxia(心拍出量の低下を伴う心不全)

cellular hypoxia(シアン化物中毒)

❹SpO2の値から呼吸不全と診断可能なのは下記の場合である(慢性呼吸不全における管理的立場)。PaO2 60Torrは,ほぼ動脈血酸素飽和度(SaO2)88~90%に相当する。

呼吸器病変が存在しているが室内気吸入下の動脈血ガスが測定できない場合。

中心性チアノーゼ(主に心臓シャント性疾患)が認められる場合。

❺呼吸不全はさらに,動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)の程度により,Ⅰ型およびⅡ型呼吸不全に分類される。

Ⅰ型呼吸不全:PaCO2が4

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