緊急処置
【1】呼吸不全を呈する大量胸水の場合は,原則入院として胸腔穿刺を行う。その際,再膨張性肺水腫を予防するため,排液量を1,000mL以下にとどめる。
【2】胸腔ドレーンを挿入した場合は,いったんドレーンをクランプしておき,翌日以降に再度排液を行う。
診断のチェックポイント
●定義
❶胸水貯留とは,「肺の周囲を被覆する臓側胸膜と胸壁・横隔膜を被覆する壁側胸膜によって囲まれた胸膜腔に,生理的な量を超えて胸水が貯留すること」である。
❷正常でも血漿と同様の組成である胸水が少量(10mL程度)胸膜腔内に薄く広がって存在し,肺の拡張,収縮運動を容易にしている。生理的な胸水は壁側および臓側胸膜に存在する微小血管から胸膜腔へ血漿成分が漏出したもので,一部は同血管から再吸収を受けるが,大部分は壁側胸膜にある小孔を通りリンパ管から排除されている。したがって,流出する量を超えて胸水が過剰に産生される病態において胸水貯留が生じる。
❸胸水は性状の違いから漏出性と滲出性に分類される。漏出性胸水は,静水圧の上昇および血漿膠質浸透圧の低下により生じ,滲出性胸水は,血管透過性の亢進により生じる。
【1】病歴
❶胸水貯留は,呼吸器内科においては,しばしば遭遇する症候である。しかし,胸水貯留は,呼吸器疾患にとどまらず,循環器疾患や消化器疾患,腎疾患,婦人科疾患などでも認められ,原因も,感染症,悪性腫瘍,心不全,腎不全,膠原病,薬剤性,医原性など多岐にわたる。
❷したがって,原因となる病態や疾患に基づき,病歴も多様である。胸水貯留に関連する主な自覚症状としては,発熱,咳嗽・喀痰,呼吸困難,胸痛(深吸気や咳嗽で増強)などがあるが,自覚症状が全くない場合もある。
❸悪性疾患の場合では,体重減少,倦怠感,食思不振などを認めることがある。
❹前述の胸水貯留をきたす病態や疾患に関する既往歴,合併症を詳細に聴取し,職業歴としては,アスベ