緊急処置
一番重要なことは,バイタルサインが安定しているか否かである。安定していない場合は,外科医へのコンサルトも必要である。また,必ず心電図をモニターする。心筋梗塞を常に鑑別に入れる。
診断のチェックポイント
●定義:突如として急激な腹痛が起こり,急性の経過をとる疾患の総称である。迅速な診断と緊急処置が必要とされる。
【1】病歴:既往歴を含めて,現在の状態をきちんと聴取することは急性腹症のリスクに関する重要な情報となるため,最も重要である。
❶心疾患(心房細動,心不全)や動脈硬化(末梢血管障害)のリスク
❷腹部手術歴
❸肝疾患の既往
❹糖尿病の既往
❺食事摂取の内容(新鮮な魚介類)
❻性活動(女性)
【2】身体所見:急性腹症の場合は,まず生命危機の状態であるか否かを確認することが最も重要である。
❶全身状態:血圧,脈拍,発熱の有無および呼吸状態(回数が多く,浅い場合は注意)。
❷腹部視診
■腹部手術痕・腹部膨満の有無(→イレウス,肝疾患,大動脈瘤破裂など)。
■皮膚の発赤(→帯状疱疹)。
■臍周囲の斑状出血(Cullen徴候)および体幹の斑状出血(Grey-Turner徴候)(→腹部大動脈瘤の破裂,急性出血性膵炎)。
■腹痛を軽減させるための体位をみる。
・じっと動かない状態(無意識におなかを抱えるような場合も):腹膜を進展させたくないため(おなかを触られたくない)(→腹膜炎の可能性)。
・絶えず,体位を変えるような状態:内臓痛を示唆する(→急性盲腸炎)。
・痛みによりもがくような状態:内臓痛を示唆する(→腎結石など)。
❸聴診:腹部所見をとる前に行う。
■腹部聴診が消失している場合(→腹膜炎か麻痺性イレウス)。
■異常な速さで腸音が亢進し,腹痛と同調(→小腸閉塞)。
❹腹部診察:痛みが全体に及んでいるか,限局しているかをまず調べる。
■腹膜炎:動いたり,咳や軽い触診,打診でも痛みが生じる。
■腹膜刺激を誘発するための咳