診療支援
診断

急性下痢(2)非感染症を中心に
Noninfectious Acute Diarrhea
大塚 和朗
(東京医科歯科大学医学部附属病院光学医療診療部・教授)

緊急処置

【1】下痢により脱水や循環不全が惹起され生命にかかわる状態がある,あるいは起こるかの判断が重要である。

❶脱水・循環不全の症候として,粘膜の乾燥,皮膚の緊張の低下,乏尿・無尿,濃縮尿があり,さらに頻脈や血圧低下がある。過換気になることもある。

❷代謝性アシドーシス,嘔吐を伴えば代謝性アルカローシスにも注意する。

【2】水分と電解質の補給が重要である。糖質電解質を経口摂取させ,重度ならば輸液を行う。

【3】アナフィラキシーや甲状腺クリーゼ,副腎不全があれば,それへの対処を行う。

診断のチェックポイント

定義

❶軟便や水様便(便の水分量が多い)の場合と,便の回数が多い場合とが下痢とされる。

❷持続期間が2週間以内を急性,2~4週間を持続性,4週間を超える場合を慢性とする。

急性下痢の多くは感染症によるものであり,これらとの鑑別をする。

急性下痢と判断されても,慢性下痢の初期である可能性もある。

【1】病歴

❶発症の形式:急激な発症なのか,徐々に悪化してきたのか。いつから便通の変化がみられるか。

❷便の性状:軟便か泥状便か水様便か。便の回数,血液や粘液の混入の有無。

❸随伴症状:腹痛の有無や部位。悪心,嘔吐の有無。発熱の有無。

❹排尿回数,尿色の変化:脱水の程度の把握に重要である。

❺最近の飲食物の内容,家族などの同じ食事をとった人の発症の有無,海外渡航歴:感染性腸炎との鑑別にも重要である。

❻薬歴の確認:特に抗菌薬の使用の有無。健康食品にも注意する。

❼既往歴:特定の食品や食材に対するアレルギーの有無も確認する。

❽心因性のものの鑑別:ストレスになる事象の有無,生活環境の変化。

【2】身体所見

❶脱水の確認:口腔乾燥,皮膚の緊張の低下,血圧低下,脈拍の増加に注意する。

❷発熱の有無:高度脱水や炎症性の下痢の鑑別。

❸腹痛の有無。圧痛や腫瘤の触知,腹膜刺激症状の有無。蠕動音の変化。炎症部位の腸管運動は低下する。

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