診療支援
診断

便秘
Constipation
神谷 武
(名古屋市立大学大学院教授・次世代医療開発学)

診断のチェックポイント

定義

❶便秘には急性便秘と慢性便秘がある。慢性便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されている。

❷さらに具体的な症状として「排便回数の減少かつ/または排便困難」が示され,排便の減少は一般には週3回未満,排便困難には過度の努責,残便感,排便時の会陰部の不快感,頻回便などが含まれる。

【1】病歴

❶発症時期はいつ頃か:急性の便秘は緊急に検査や処置を必要とする場合が多く,緩徐な経過の慢性便秘は緊急性のない疾患が多い。

❷排便回数・排便量:便秘では回数が減少する場合が多いが,残便感のため回数が増加する場合もある。

❸便の形状はどのようであるか(ブリストル便形状スケールを用いて):タイプ1(兎糞状・木の実状便),タイプ2(兎糞集簇の硬便)が便秘の形状。

❹残便感はあるか,排便に要する時間はどれくらいか,排便時の努責はあるか:排便困難感は慢性便秘症の典型的症状である。

❺腹痛はあるか,腹痛と排便に関連性はあるか(→便秘型過敏性腸症候群,大腸癌,Crohn病など炎症性腸疾患)。

❻腹部膨満感はあるか(→巨大結腸症,偽性腸閉塞症)。

❼便に血液の付着はあるか(→大腸癌,潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患のスクリーニング)。

❽合併している疾患,現在治療中の疾患はないか(→症候性便秘)。

❾常用している薬剤はないか(→薬剤性便秘)。

❿腹部手術歴はないか(→癒着による消化管狭窄の便秘)。

【2】身体所見

❶腹部視診,触診による腹部膨隆,腹部腫瘤(→腸閉塞,大腸癌や婦人科腫瘍など腫瘍性病変の疑い)。

❷腹部聴診による腸蠕動音亢進(→便秘型過敏性腸症候群のほか,腸管癒着,大腸狭窄の可能性の疑い)。

❸腹部打診による鼓音,聴診による腸蠕動音低下(→巨大結腸症,偽性腸閉塞症の疑い)。

❹直腸肛門指診:直腸内の便の存在の有無,腫瘍病変,直腸肛門狭窄の有無の確認を行う。

❺症候性便秘が

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