診療支援
診断

脾腫
Splenomegaly
吉田 寛
(日本医科大学大学院教授・消化器外科学)

緊急処置

【1】緊急性はきわめて低い。しかしまれに急速に増大し腹痛増強して破裂をきたす場合がある。その際には腹腔内出血によるショックに陥る。

【2】脾破裂による出血性ショックに対する処置としては,点滴ラインを確保し輸液,輸血,昇圧薬などを投与するとともに,緊急で(部分的)脾動脈塞栓術や脾臓摘出術を施行する。

診断のチェックポイント

定義

❶脾臓は体重比では幼児期が一番大きい。

❷成人脾臓の大きさは正常では直径10~12cm,幅6~8cm,重量80~120g(脱血時)であり,脾腫は,それ以上に腫大した状態である。

❸超音波で脾臓の径(前縁と脾門との距離)の値(cm)とそれと脾門で直交する短径の値(cm)を掛けたspleen indexが20cm2を超えれば脾腫と診断する。

【1】病歴

❶脾腫はさまざまな病態で生じるが,特に門脈圧亢進症(原因疾患として肝硬変が80%と最多,ほかに特発性門脈圧亢進症,肝外門脈閉塞症,日本住血吸虫症,Budd-Chiari症候群など),血液疾患,感染症,代謝性疾患,膠原病,脾腫瘍などを念頭において病歴を聴取する。

❷腹部手術歴,輸血歴,飲酒歴,吐下血歴などの聴取も重要である。

【2】身体所見

❶脾臓は左上腹部第9~11肋間の高さで,胃,横隔膜,左腎,膵尾部,横行結腸に囲まれており,正常では体表から触れない。

❷高度の脾腫では,視診で左上腹部が膨隆している。触診では,左上腹部に腫瘤を触知するが,軽度の脾腫では触知は難しい。

❸発熱,腹痛,貧血,出血傾向,関節痛などの症状や,黄疸,腹水の有無を確認する。

【3】検査

❶脾腫の診断には,超音波,CT,MRIなどの画像診断が重要となる。

❷脾腫を呈する場合,門脈側副血行路の発達が認められることがある。消化管内視鏡を施行し,消化管静脈瘤の有無を調べておく。

原因疾患と頻度

 脾腫は,門脈圧亢進症,血液疾患,感染症,代謝性疾患,膠原病などで認めら

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