緊急処置
【1】乏尿すなわち急性腎不全と考えてよいため,治療に入る前に少なくとも腎前性,腎性,腎後性の鑑別を行う必要がある。
【2】腎前性であれば輸液,輸血などの体液補充,腎性であれば血液透析を中心とする急性血液浄化,腎後性であれば腎瘻など外科的な処置が必要となる。
【3】鑑別で最も迅速なのは超音波検査で,水腎症,水尿管症を認めれば腎後性である。腎前性と腎性は鑑別が困難であることも少なくない。
診断のチェックポイント
●定義:成人で尿量が1日400mLまたは0.5mL/kg/時(体重60kgで30mL/時)であるが,現在は急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の定義を用いて早期に診断し,介入したほうがよい予後が得られると考えられる。AKIの定義としてはKDIGOガイドラインによる診断基準〔「急性腎障害」項(→)の表1図参照〕が推奨されている。
【1】病歴:通常の生活で自らの尿量を意識していることは少ないので,尿量に関しての病歴は得られない。院外発症の救急受診,院内発症を問わず,医療者が診療のなかで発見,診断することが多い。院内発症であればインアウトバランスの記録から重要な情報が得られる。院外であれば体重の変化がこれに近い情報となる。
❶腎前性:脱水(高齢者では感冒,嘔吐,下痢),出血(吐血,下血,手術),熱傷など循環血液量減少を示唆する病歴が考えやすい。また,循環不全を示唆する病歴として心筋梗塞,心不全,不整脈などの胸部症状が考えられる。
❷腎性:薬剤の追加変更(一般薬含む),慢性腎臓病や糖尿病の既往(これらの急性増悪),造影剤の使用(患者の意識としてはCT,カテーテル検査)を考える。横紋筋融解症の場合には熱中症や高温環境での運動といった典型的な病歴のほか,クラッシュシンドロームとなる事故外傷,神経疾患などによるけいれんもまれではない。近年では悪性腫瘍による化学療法を