診断のチェックポイント
❶分類・疫学
■顕微鏡的血尿と肉眼的血尿に分類される。
■尿潜血陽性率はすべての世代で女性が高く,また加齢とともに上昇する。本邦における高齢化社会到来を背景に,今後血尿を主訴とする患者の増加が予想される。
■医療経済効率を考慮し,かつ血尿患者の健康を守るための診療が望まれる。
●定義
❶American Urological AssociationのBest Practice Policyでは,血尿の定義として,年齢・性を区別しておらず,またその基準は示されていない。
❷本邦では血尿の基準は,顕微鏡下で尿中赤血球5個/HPF以上,あるいは無遠心尿でのフローサイトメトリー法で20個/μL以上を異常(血尿)とするのが妥当としている。
【1】診断の進めかた
❶尿潜血反応は一過性のことが多く,約半数は経過観察で消失する。しかしながら,1割程度は進行して蛋白尿が出現し,その一部は腎不全に至る可能性がある。
❷原因疾患としての尿路上皮癌の鑑別は非常に重要であるが,可能なかぎり非侵襲的検査を優先させる。膀胱鏡検査は侵襲的検査であり,かつ血尿,尿路感染症を誘発する可能性がある。不必要な膀胱鏡検査を減らすことが重要であり,尿路上皮癌の高リスク症例(表1図)に対してのみ施行を検討するべきである。
❸精査により悪性所見がない場合でも,反復する肉眼的血尿は厳重な経過観察が推奨される。
❹血尿の診断には通常中間尿を用い,採尿前は激しい運動は避ける。採尿前運動は血尿やヘモグロビン尿(試験紙潜血反応を陽性にする)の原因となるため注意が必要である。逆にアスコルビン酸(ビタミンC)などの還元作用のある物質が存在すると偽陰性(偽低値化)となる。
❺蛋白尿を伴う顕微鏡的血尿は末期腎不全の高リスク群であるが,適切な管理を行うことで腎機能予後の改善が期待される。蛋白尿を伴わない無症候性顕微鏡的血尿は末期腎不全のリスク