診療支援
診断

女性の下腹痛・腰痛
Lower Abdominal Pain and Lumbago in Women
生水 真紀夫
(千葉大学大学院教授・生殖医学講座)

緊急処置

 ショック症状(血圧低下・頻脈・意識障害)を伴う下腹部痛では,異所性妊娠破裂や胎盤早期剝離を念頭におき,静脈路の確保・急速輸液・酸素吸入を行いつつ緊急手術の準備を整える。

診断のチェックポイント

❶下腹部痛・腰痛の原因は,消化器・筋骨格・血管・神経など多岐にわたる。女性では,婦人科臓器(卵巣・卵管・子宮・腟)も加わる。さらに,月経周期や妊娠,更年期や加齢といったライフサイクルに伴い原因疾患が大きく変化する。

❷下腹部痛の診断では,まず急性発症と慢性発症とに分ける(本項は主に急性発症について記載)。急性発症例では,直ちに生命にかかわる可能のある患者を抽出してすみやかに治療介入を行う。その他の患者では,病歴と身体所見から検査項目を絞り込み鑑別診断を進める。

❸鑑別にあたり,まず妊娠の可能性を検討する。妊婦では,鑑別すべき重大な疾病も多く,診断・治療の判断基準が非妊婦と異なる。患者が「妊娠していない」と答えた場合でも,妊娠反応を省略すべきでない場合もあることに注意する。

❹初診医として診療を行う場合には,全臓器の疾患を念頭において診断を進める。一方,他科受診後の患者を診察する場合には,婦人科疾患と関連した疼痛であることを疑う所見,すなわち1)月経周期との関連がある(周期性増悪),2)内診により痛みが再現できる,3)発症前に普段と異なる性交や帯下の増加があった,の3点に注目して鑑別を進める。

【1】病歴:疼痛の発症のタイミングと強さ・随伴症状と,その後の変化,上述❹1),2)について聴取する。

【2】身体所見

❶身体診察:痛みが内臓痛・体性疼痛・神経由来疼痛のいずれかであるかを鑑別する。

内臓痛(visceral pain)

内臓痛は,管腔臓器壁内や腸間膜漿膜面の痛覚受容器により感知される。感覚受容器の密度が低いため痛みの局在が不明瞭である。また,脊髄神経支配や投射にオーバーラップがあるた

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?