診断のチェックポイント
●定義
❶閉経後女性の不定愁訴は,更年期(閉経前後の5年間)以降に現れる多種多様な症状とほぼ同義であり,器質的変化に起因しないものである。症状と発症要因を明確に関連づけることが困難なことも多く,更年期症状ともよぶ。
❷主たる原因は卵巣機能の低下であり,これに加齢を伴う身体的変化,精神・心理的な要因,社会文化的な環境因子が複合的に影響し,症状が発現する。これらの症状のなかで日常生活に支障をきたす病態を更年期障害と定義している。
❸更年期障害のなかにはのぼせ・発汗(血管運動神経症状),情緒不安定・抑うつ(精神神経症状),泌尿生殖器の萎縮症状など,発症機序の異なるさまざまな症状が混在する。
❹以下,閉経後女性の不定愁訴を主訴とする症候群を更年期障害と同義として解説する。
【1】病歴
❶いつから発症しているか
■閉経との関連から考慮し,閉経後5年以内であれば急激な内分泌学的変化(エストロゲン低下)に起因するものであることが多い。
■受診のたびに,訴える内容や症状の程度が変化することも少なくない。
❷症状の種類
■症状は大きく分けて,自律神経失調症状,精神的症状,その他,に分類される(表1図)。
■症状を整理すると,エストロゲンの低下と関連の深い血管運動神経症状(ホットフラッシュ,発汗,動悸など)を認め,ほかの器質的疾患が除外でき,血液検査で卵巣機能低下を認める場合,更年期障害と診断できる。
■原則的には類似症状を呈する他疾患の除外診断に基づいて決定される。
❸患者背景
■更年期は女性にとって人生の大きな節目であり,それに伴う変化はすべての器官,臓器,心理,性格などに影響する。それまでの人生史が凝縮されており,家庭・職場環境,加齢や老後への不安,個人的性格などに起因するものがあり,患者個別の多種多様な症状を呈する。
■更年期でみられる個々の症状は老年期女性にみられることもあり,更年期女性に限