診断のポイント
熱傷患者は,熱傷面積〔%TBSA(total body surface area)〕,熱傷深度,気道熱傷などの合併症,年齢などで重症度が診断できる。
【1】受傷面積の算定
❶多数熱傷患者発生時は,できるだけ現場で迅速に受傷面積を判定し重症度診断を行う必要があり,そのためのさまざまな面積算定法がある。
❷算定法には,1)9の法則,2)小児向きの5の法則,3)年齢別になっているLund and Browderの方法,4)手掌法がある。本人の手掌と指腹を合わせて1%TBSAとする手掌法が最も簡便である。
【2】深度:水疱形成の有無,色調,痛みをもとにした臨床所見から診断する方法が基本である。Ⅰ度,Ⅱ度,Ⅲ度に分ける。
❶Ⅰ度熱傷:表皮のみの熱傷であり,発赤とピリピリした痛みが生じるが,特に治療は不要であり熱傷面積に含めない。
❷Ⅱ度熱傷:真皮層まで傷害されたもので,真皮の浅い部分まで達しているものを浅達性Ⅱ度熱傷〔superficial dermal burn(SDB)〕といい,痛みが強く,水疱形成がみられる。真皮の深い部分まで達しているものは深達性Ⅱ度熱傷〔deep dermal burn(DDB)〕といい,鈍い痛み,水疱形成あるいは表皮剝離が生じ,時に深紅色を呈する。
❸Ⅲ度熱傷:皮膚全層の傷害であり,痛みを感じず,白く硬い皮膚が特徴である。
緊急対応の判断基準
【1】多数熱傷患者発生時は救急搬送時間を考慮した複数の救急病院への分散搬送が原則である。搬送先病院は,重症度に分けた対応可能患者数に応じた収容が計画される。
【2】重症度診断には,Artzの診断基準(表1図),救急振興財団発行の重症度・緊急度判断基準(表2図),米国熱傷学会の熱傷センターへの照会基準(表3図)などが参考となる。
症候の診かた
【1】痛み:持続する自発痛,圧痛の有無をみる。痛みを伴わない圧としてしか感じられなけ