診断のポイント
【1】化学損傷診断の第1は原因物質の同定にある。
【2】事業所など管理された場所での事故であれば本人・現場担当者から原因物質名,その温度・濃度,受傷機転,および洗浄の有無を聴取する。
【3】詳細が不明な場合は,化学物質容器のラベル,製品名など手がかりになる情報を収集する。
【4】事故初期には化学損傷であることがわからないこともある。警察との連携や,傷病者が複数の場合はほかの搬送先医療機関との情報共有が原因物質の同定につながることがある。
【5】酸は組織の凝固壊死により,なめし皮状の焼痂を形成する。アルカリは組織の液化壊死と蛋白変性を引き起こしながら深部へ拡散していくため,酸よりも組織損傷が強い。フェノール,石油類などの有機化合物は細胞膜の損傷により皮膚を障害する。
症候の診かた
【1】化学損傷では原因物質の同定とともに重症度を診断する必要がある。
❶気道,呼吸,循環,中枢神経のバイタルサインを評価する。
❷化学物質の誤飲では上気道の狭窄を,吸入では下気道・肺胞の損傷による呼吸障害をきたす可能性がある。
❸熱傷面積が広範であると熱傷性ショックに陥る可能性がある。
【2】皮膚局所は一般の熱傷創と同様に,受傷面積と深度を評価する。
❶化学損傷による創は時間経過とともに深達化する傾向がある。
❷眼の化学損傷では,流涙,結膜の充血,角膜混濁がないかを確認する。
❸外耳道,鼓膜に異常がないかも確認する。
検査所見とその読みかた
【1】皮膚壊死に起因する受傷初期の熱傷性ショックに加え,吸収された化学物質による臓器障害が出現していないか,および治療が適正であるかについて,呼吸・循環の持続モニター,血液生化学検査,血液ガス分析の結果から判断する。
【2】気道・呼吸の異常を認める場合は,胸部X線・CTのほか,気管支ファイバースコープにより上気道狭窄,下気道の損傷程度を評価する。
合併症・続発症の診断
皮膚から吸収