診断のポイント
【1】電流による外傷である。
【2】電流が体内を流れ深部組織損傷・意識障害・不整脈などを生じることもあれば,体表面のflash(閃光)やarc(アーク),金属製装身具の発熱,着衣の燃焼などで熱傷を生じることもある。
症候の診かた
【1】体内を電流が流れた場合,電気が出入りした皮膚局所に接触点とよばれる皮膚熱傷・電流斑・電紋を生じることがある。しかし,体内を電流が流れても皮膚所見がないこともある。すなわち,体表面から深部損傷の有無や程度を受傷直後に診断するのは困難であり,それが電撃傷の特徴である。
【2】意識障害・呼吸停止・不整脈・心肺停止などがある場合:脳や心臓に電気が流れた可能性が示唆される。
【3】四肢の深部組織損傷でコンパートメント症候群や横紋筋融解症を呈することもある。
検査所見とその読みかた
【1】心電図検査や心臓超音波検査:不整脈や心損傷を観察する。
【2】血液検査:代謝性アシドーシス,乳酸上昇,CPK上昇,ミオグロビン血症があれば深部組織損傷が示唆される。
【3】局所の画像検査,組織内圧測定,穿刺や切開検査など:コンパートメント症候群や深部組織壊死を調べる。
確定診断の決め手
【1】電撃傷の診断:感電や落雷などの受傷機転が患者や目撃者から確認された場合に診断される。
【2】患者が意識障害で目撃がない場合:受傷状況・身体所見・検査所見などから推定することになり,感電や落雷を疑わせる環境における受傷か,電撃傷に起因する症候があるか,など総合的に考える。
【3】感電や落雷を疑わせる環境として以下のような例が挙げられる。
❶発電所,送電線,配電線,バッテリー,架線,工場など電気を取り扱う職場。
❷コンセントやコードをいじる小児の家庭。
❸落雷の可能性がある野外活動。
❹風水害で切れた電線や,電柱や電線につかまり避難するような洪水。
❺電気ショックや電気メスが使用される医療現場。
【4】感電や